第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

体温

[P102] 一般演題・ポスター102
体温

Sun. Mar 3, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:稲垣 喜三(鳥取大学医学部麻酔・集中治療医学分野)

[P102-2] 心室中隔切除術後に原因不明の高体温を呈し、術後2日目に死亡した若年患者の一症例

喜多 桂1, 平井 昂宏1, 横山 達郎1, 林 智子1, 鈴木 章悟2, 足立 裕史2, 内田 亘3, 碓氷 章彦3, 西脇 公俊2 (1.名古屋大学医学部附属病院 麻酔科, 2.名古屋大学大学院医学系研究科 麻酔・蘇生医学分野, 3.名古屋大学大学院医学系研究科 心臓外科学)

【背景】心室中隔切除術後に原因不明の高体温を呈し,循環動態不安定化から体外式膜型人工肺(VA-ECMO)導入するもPOD2に死亡した若年患者の症例を経験した.剖検にて骨格筋に横紋筋融解症と脂肪肝を認め,後方視的に病態としてプロポフォールによる悪性高熱類似症状やプロポフォール注入症候群(PRIS)の関与が考慮されたため報告する.報告に当って,患者本人死亡のため、当院倫理委員会の承認を得た.【臨床経過】症例は15歳男性,身長178cm,体重78.8kg.肥大型心筋症に対して左室中隔心筋切除を施行した.既往歴に脂肪肝,心室細動があり,植込み型除細動器植込み後であった.麻酔はミダゾラムで導入し,術中はセボフルランとプロポフォールで維持した.人工心肺離脱に難渋し大動脈内バルーンパンピング補助下に人工心肺を離脱した.人工心肺離脱後より体温が上昇し38.3℃の発熱を認めたが,高炭酸ガス血症や頻脈,代謝性アシドーシス,褐色尿は見られず,悪性高熱は否定的と考えた.ICU入室時体温は38.5℃,クレアチニンキナーゼ(CK) 1545 U/Lであった.術後も体温は上昇し積極的なクーリングにも関わらず42℃まで上昇した.術後の鎮静には年齢的に禁忌には当たらないことを確認し、プロポフォールを使用した.ICU帰室直後には全身状態は安定していたが,POD1夕方より低酸素血症増悪し,また十分な容量負荷とカテコラミン使用にも関わらず循環不全に陥った.CK 2142U/Lと5000 U/L以下であり,経過を通して酸塩基平衡の異常を認めなかったためにPRISの可能性は低いと判断したが,念のためプロポフォールの投与を終了し,ミダゾラム持続静注を開始した.ICUでのプロポフォール使用時間は30時間,投与量は1.3-1.9mg/kg/hrであった.悪性症候群の原因となる薬剤の使用はなかった.POD2に心室頻拍となり脈圧が消失し,VA-ECMOを導入した.しかし血管径が細いため脱血不良が著しく,両大腿静脈脱血にシステム変更するなどの対応を行ったが十分な血流量の確保ができず,19時間後に死亡した.剖検では肝臓に全体の50%程度の脂肪化と,骨格筋に横紋筋融解症を認め,後方視的に病態としてプロポフォールによる悪性高熱類似症状やPRISの関与も考慮された.【結論】心室中隔切除術後に原因不明の高体温を呈し,術後2日目に失った若年患者の一症例を経験した.