第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

体温

[P102] 一般演題・ポスター102
体温

2019年3月3日(日) 11:00 〜 11:50 ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:稲垣 喜三(鳥取大学医学部麻酔・集中治療医学分野)

[P102-3] Wernicke脳症における低体温症の1例 -当院における低体温症の管理を中心に-

松本 惇, 市原 利彦, 中島 義仁, 横山 俊樹, 川瀬 正樹 (公立陶生病院 救命救急センター)

(目的)低体温症の原因は、偶発性が多いが、その原因は様々な基礎疾患、あるいは新たな急変疾患を有したため、低体温に至る症例も少なくない。今回Wernicke脳症を伴った、低体温症を経験したので報告し討論したい。(対象)65歳、女性、主訴はふらつきでER来院時、徐脈と低体温(29.2℃)であった。意識レベルはやや傾眠傾向で、意識レベルとしてGCS14点であり、高度な意識障害ではなかった。下肢の動きに左右差を認めた。既往歴に高血圧、Wernicke脳症があり、ビタミン剤は投与されていた。また問診から極度の偏食であることも判明した。CTは大きな異常なく、MRIは左前頭葉の微小出血を認めた。低アルブミンや貧血は認められなかった。甲状腺機能も正常値であった。経過からビタミンB1は正常下限であったが、非アルコール性で、偏食によるWernicke脳症と判断された。トランスケトラーゼの活性値は測定していない。MRIにおいてT2強調画像およびFLAIR像で中脳水道周辺や延髄上部から橋の背側、視床内側の高信号の典型的画像は認めなかったが、臨床的にWernicke脳症と判断した。(結果)復温はエアパッド加温装置、血液・医薬品用加温器等を用い、肝酵素や腎機能は改善し、意識障害も改善した。サイアミンを1日600mg投与し、経過が改善し第12病日独歩退院した。結果ビタミンB1が著効した症例であった。(考察)低体温委は種々の原因があるが、Wernicke脳症が原因は少ないが意識障害を軽度きたすことから、環境により低体温を惹起することはあり得ると考える。Wernicke脳症とは脳内代謝異常であり変性疾患と考える。ビタミンB1の低値はWernickeの50%に見られるのでその値が正常値でも診断されることもありえる。低体温になる原因は種々あるも意識障害を来たした結果低体温に至ったことが考えられた。(結語)Wernicke脳症が原因で意識障害を来たし低体温症を誘発した症例を経験したので報告し、当院における低体温症の管理法を含め議論する。