第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

外傷・熱傷

[P12] 一般演題・ポスター12
外傷・熱傷01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場12 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:梶田 裕加(愛知医科大学病院 救命救急科)

[P12-1] 上腕骨頚部骨折を契機に出血性ショックから心停止に至った多発外傷の一例

小野 貴広, 関谷 芳明, 山田 均, 荒木 祐一, 松宮 直樹 (総合病院土浦協同病院 救急集中治療科)

【背景】多発外傷患者の初期治療では生命の危機的状況を回避することが最優先され、機能温存といった治療は制約を受けることが多い。開放創や動脈・神経損傷、轢断など早期介入を要する病態を除けば、四肢の骨折単体に対しては一時的外固定ののちに全身状態が落ち着いた段階で根治的手術が施行されることが散見される。しかし受傷時に明らかな有害事象を認めずとも一時的外固定の後に致死的病態を来しうる症例も存在する。今回、上腕骨頚部骨折を伴う多発外傷後に骨折部から出血し心停止に至った症例を経験したため文献的考察を交え報告する。【臨床経過】胃十二指腸潰瘍の既往のある71歳女性。知人が運転する乗用車の助手席に乗車中、正面から踏切の支柱に衝突し受傷。接触時GCS E3V5M6と軽度意識障害あり、末梢湿潤・頻脈とショック状態。両鼻腔・口腔内より出血あり。胸郭運動・呼吸音は左優位で低下。右肘部に変形、左上肢に打撲痕あり。Extended FASTで左肺のLung sliding signの消失、Trauma Pan-scanで両側頬骨骨折、右上顎骨骨折、左気胸、右上腕骨通顆骨折および左上腕骨頚部骨折を認めた。そのほか骨折や出血は認めず。気胸に対しては胸腔ドレーン留置下での管理を開始した。口腔外科および整形外科と協議し、顔面骨骨折は保存的加療、両上腕骨骨折はシーネ・三角巾固定で待機的手術の方針でICU入院となった。第二病日に突如血圧低下を認め心停止に至った。1サイクルのCPRで心拍再開。来院から心停止後までで4.3g/dLの急激なHb低下を認め出血性ショックによる心停止が疑われた。造影CTで左前上腕回旋動脈からextravasationを認めたため、血管造影を施行しコイルおよびゼラチンスポンジによる塞栓術を施行し止血を確認し以降は貧血の進行を認めずに経過した。来院時のショックや入院後の心停止、外傷に伴う高CK血症による腎機能障害の進行を認め第10病日から第18病日にかけて血液透析を要した。また入院後より炎症反応の上昇を認め、肺炎および顔面骨骨折に伴う嫌気性菌感染を疑い第30病日まで抗生剤投与を行った。全身状態の改善に伴い、第26病日に両上腕骨骨折に対する観血的整復固定術を施行。両上肢とも自動運動可能なレベルまで段階的に回復した。第59病日にリハビリ目的に転院となった。【結論】来院時に動脈損傷を伴わない四肢骨折であっても、骨折形態により血管損傷のリスクを判断し、早期の観血的整復固定術を検討する必要がある。