[P12-2] 外傷性脾損傷の血管内治療後に再出血を起こし、外科的治療を要した一例
症例特に大きな既往のない77歳男性。来院当日に高さ3mの位置から転落し、左腰背部を受傷したため当院を受診した。来院時のバイタルサインは安定していたが、Primary surveyで施行したFASTで脾腎境界に液体貯留を認めた。体幹部造影CTを施行した結果、外傷性脾損傷Grade3bが判明し、一部extravasationを認めていた。Interventional Radiology(以下IVR)で脾臓下極の動脈損傷を同定し、同部位に対して塞栓術を行い止血を得た。術後は経過観察目的にICU入室となった。経過IVR後止血は得られ、その後全身状態も良好であった。第4病日に突然の腹痛、ショック状態となった。腹部に強い圧痛と腹膜刺激症状を認め、脾臓からの再出血の可能性を考慮し、再度造影CTを実施したところ、脾臓上極に多発する仮性動脈瘤を認めた。複数箇所にextravasationを認め、遅発性脾損傷による出血性ショックと診断した。同部位は初回の造影CTでは動脈瘤は認められていなかった。同日に緊急IVRを実施し、脾動脈本幹に近い部分を塞栓することで止血を得たが、側副血行路の塞栓にまではいたらず、複数の仮性動脈瘤は残存している状態で帰室した。術後の状態は安定していたが、今後の再出血のリスクが高い状態であると判断した。そのため第10病日に脾臓摘出術を行った。術中所見としては活動性の出血は認められなかったが、脾臓上極、下極ともに比較的大きな損傷を認めていた。術後経過は良好であり第13病日にドレーン抜去とした。第21病日に退院となった。考察・結語近年IVRが発達したことで外傷性脾損傷に対しての初期治療でIVRが行われることが多く、比較的良好な治療成績を認められている。しかし本例のように脾損傷のGradeが高い場合はIVR後の再出血の頻度が多いことが報告されており、再出血の原因としては遅発性に脾動脈瘤の形成が関与していると言われている。脾動脈瘤のIVRでの塞栓に難渋するような場合は脾臓摘出を念頭においた治療戦略がよりよい可能性がある。