[P13-6] 縦隔腫瘍による気管分岐部の気道狭窄に対しDouble Lumen Endotracheal Tubeで人工呼吸管理を行った1症例
縦隔腫瘍による気管分岐部の気道狭窄に対し、Double Lumen Endotracheal Tube (DLT) を用いて人工呼吸管理を行った症例を経験したので報告する。【症例】82歳男性。身長15cm、体重53kg。既往歴:脳梗塞。現病歴:突然の腹痛に対し近医受診、当院紹介となった。精査の結果、脾梗塞、縦隔腫瘍と診断された。リンパ腫を疑い全身麻酔下に生検施行。縦隔腫瘍による気管分岐部の圧排を認めたが、術後経過も良好であったため、術後7日目、一時退院した。退院3日後に突然呼吸苦が増悪し、当院に救急搬送された。搬入時、PaCO2 99mmHgと換気不全を認めたため、シングルルーメンチューブによる人工呼吸管理が開始された。CT検査では、気管分岐部直上に3mm程度のスペースしか認められなかった。PEEP負荷にて換気障害が改善するのを確認した後、ICUにてPEEP 8-12cmH2Oで人工呼吸管理を開始した。同日、腫瘍からの出血が気道閉塞の原因と疑い、試験開胸術が行われたが、明らかな血腫を認めず、腫瘍の急速な増大が気道閉塞の原因と判明した。手術終了後、気管支内視鏡にてPEEP負荷による気管閉塞の改善を確認した後、気管支ファイバーガイド下に35Fr left DLT(Broncho-Cath)を挿入留置した。主気管支以下は内腔が保たれていたため、Bronchial lumenのカフにはエアを入れず管理した。集中治療入室後、DLTによる人工呼吸管理を継続した。術後1日目よりR-THP・COP療法開始。腫瘍の縮小を認めたため術後5日目に抜管した。抜管後、気道閉塞症状は認めず、術後7日目に一般病棟へ転棟した。【考察】本症例では気管分岐部の狭窄が高度であり、ECMOによる呼吸管理も検討したが、家人の同意が得られず人工呼吸器による呼吸管理を行った。気管ステント留置も考慮したが、術前のPEEP負荷による換気障害の改善ならびに、術後の気管支鏡検査によるPEEP負荷による気管内腔増大を確認できたため、DLTによる人工呼吸管理を選択した。DLTによる人工呼吸管理は、縦隔腫瘍による気管分岐部の気道閉塞に対する気道確保の選択肢の一つとして有用と考えられる。