第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P16] 一般演題・ポスター16
循環 症例01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:50 AM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:清水 一好(岡山大学病院 麻酔科蘇生科)

[P16-6] 難治性心室細動で救急搬送され死亡したWPW症候群の一例

西山 千尋, 松本 丈雄, 筒井 徹, 高場 章宏, 河村 夏生, 櫻谷 正明, 加藤 之紀, 吉田 研一 (JA廣島総合病院 救急集中治療科)

【背景】WPW症候群患者で心室細動がみられることは稀であり、致死的不整脈を発症する頻度としては約2%程度と報告がある。適切にリスク評価を行い、突然死のハイリスクを有する患者に対してアブレーション加療を行うことが推奨されている。今回無症候性のWPW症候群を既往に認め、保存的に経過観察されていた患者が心室細動を発症し救急搬送され死亡にいたった一例を経験したため報告する。【症例経過】症例は25歳男性。中学の健康診断でWPW症候群を指摘され以降、無症状で経過していた。ベッドから転落した音に気付いた両親が部屋にかけつけ、うめき声をあげている患者を発見したところ、すぐに意識が消失し救急要請した。発見から約13分後に救急隊が到着し、初期波形は心静止であり、救急隊により胸骨圧迫を施行されながら救急搬送となった。約31分後に当院到着し、病着時波形は心室細動であり、ACLS心室細動アルゴリズムに準じて、除細動、アドレナリン投与、アミオダロン投与するも自己心拍再開せず、VA-ECMOを導入した。右大腿静脈に脱血管、左大腿動脈に送血を挿入し、心肺停止から約91分後にECMOポンプオンとなった。ECMO開始後、緊急心臓カテーテル検査を施行したが血管攣縮のためガイドワイヤーカニュレーションが困難であり、心電図変化や既往歴より虚血性心疾患の可能性は低いと判断し冠動脈造影は断念した。ICUへ入室し集中治療管理を継続したが、輸血を大量に行うも出血コントロールがつかず、循環動態維持が困難となり、当院到着約23時間後に死亡を確認した。【結論】WPW症候群を診断された患者の突然死のリスク評価については侵襲的な電気生理学的検査(EPS)を行う必要があるが、その適応については症候性の患者が主で、無症候性では突然死の家族歴を有する場合は人命に関わる危険度の高い職業についている患者などが推奨されており、全例で行う必要はないとされている。しかしながら、若年~壮年期の無症候性WPW症候群に対して治療方針決定のためにEPSを施行することが有用であるとするとの報告もあり、本症例のように無症候性WPW症候群であっても初回発作が重症な致死的不整脈で出現することも頻度が少ないながらも存在するため、慎重な経過観察、リスク評価が必要であると考えられた。