[P17-5] 心原性ショックを伴う心筋梗塞症例に対して体外式膜型人工肺管理中に右房圧上昇を認め治療に難渋した一例
【背景】体外式膜型人工肺(VA-ECMO)は、出血性合併症リスクを有する補助循環装置であり、その予防・迅速な対応が重要である。右房圧上昇が、出血性合併症発生に関連している症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は80代男性。ST上昇型心筋梗塞症・心原性ショックにて当院搬入。搬入後、心室頻拍が出現し、胸骨圧迫ならびに電気的除細動を施行し洞調律に復帰した。緊急冠動脈造影を施行し、左前下行枝の高度狭窄病変を認めた。同病変部位に対し、直接的経皮的冠動脈形成術(Primary PCI)を施行。薬剤溶出性ステントを留置し再灌流に成功した。 PCI施行中、昇圧剤投与にても循環動態維持が困難であり、大動脈内バルーンパンピング・VA-ECMOを導入した。第2病日より腎機能の悪化ならびに尿量低下を認めた。右心カテーテルモニタリングでは、右房圧の上昇(12mmHg)も伴っており、持続緩徐式血液濾過透析(CHDF)による体液管理を開始した。以後、右房圧は低下し、5-8mmHgで管理した。第5病日より、心機能の改善傾向を認めたためVA-ECMOの離脱を目指していたが、第6病日よりCHDFによる体液管理下にもかかわらず、右房圧の再上昇(15mmHg)を認めた。第7病日には、貧血の進行も認め、原因精査のため胸腹部CTを施行したところ、右胸腔内出血ならびに出血に伴う右房の圧排所見を認めた。以上から、右房圧の上昇はVA-ECMOによる出血性合併症に伴うものと考えられ、同日カテーテルにて動脈塞栓術を行って止血し、胸腔ドレナージを行ったところ、右房圧の低下を認めた。その後、VA-ECMOを抜去し、ヘパリンを中止した。以後、右房圧の低下(6mmHg)を認め、補助循環・人工呼吸器管理から離脱し、リハビリ病院へ転院した。【結論】本症例は、CHDFによる除水を進めたにもかかわらず、右房圧が上昇し、その解釈に苦慮した症例であったが、CTによる全身検索により、VA-ECMO使用に伴う胸腔内出血が原因と判断しえた。右房圧の上昇は胸腔内の占拠性病変を示唆する所見である可能性があり、右房圧の上昇を認めた際にはVA-ECMO関連出血性合併症の発生も考慮すべきと思われたので報告する。