[P18-5] 胸痛後の心室細動に下行大動脈解離を合併していた1例
緒言:心室細動など致死性不整脈では急性冠症候群を考慮必要がある。一方上行大動脈解離では、解離の冠動脈への波及により冠動脈疾患を併存することがある。今回我々は、胸痛後の心室細動に、下行大動脈解離を合併していた1例を経験したので報告する。症例:60歳代男性。主訴は胸痛、息苦しさ。朝突然の胸痛および息苦しさのため救急要請。救急隊到着時意識レベルはGCSE4V5M6であったが、救急隊接触直後、倒れこんだ。救急隊が装着したモニタ―心電図で心室細動でありAEDによる除細動を計6回施行され、当院へ搬送された。当院搬送時、橈骨動脈触知可能。来院後すぐに従命可能であった。救急外来での心臓超音波では大動脈弁逆流、心嚢液、可視内での上行大動脈内flapを認めず、胸痛・息苦しさが主訴であり、急性冠症候群を疑い心臓カテーテル検査施行。有意狭窄を認めなかった。その後造影CTを施行したところ大動脈弓部下より腹腔動脈直上まで大動脈解離と診断された。来院時の採血ではD-dimerが27.8μg/mlと異常高値を示していた。考察:胸痛後の心室細動であり急性冠症候群の存在を疑ったが、本症例はStanfordB型の急性大動脈解離であった。上行大動脈解離に伴う急性心筋梗塞の報告例は多いが、StanforodB型の大動脈解離に伴う心室細動の報告は稀であった。来院当初急性大動脈解離を鑑別診断に挙げていなかったが、D-dimerの上昇を認めており速やかに診断できた可能性があった。結語:胸痛後の心室細動に、下行大動脈解離を合併していた1例を経験した。心室細動症例においてもD-dimer上昇を認めた場合、原因疾患に急性大動脈解離を念頭に置くべきである。