第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P19] 一般演題・ポスター19
消化管・肝・腎01

2019年3月1日(金) 11:00 〜 11:50 ポスター会場19 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:木村 友則(東京女子医科大学八千代医療センター救急科・集中治療部)

[P19-3] 血管塞栓術が奏功した下腸間膜動静脈瘻・静脈瘤破裂による下部消化管出血の一例

彦根 麻由, 宮崎 紀樹, 桑原 佑典, 田邉 真樹, 清水 洋, 中村 一葉, 小林 未央子, 石田 琢人, 濱邉 祐一 (東京都立墨東病院 高度救命救急センター)

【背景】下腸間膜動脈領域の動静脈瘻や動静脈奇形は国内外で約40例の報告に限られる稀な病態である。門脈圧亢進症や虚血性腸炎による症状を認めることが多いが、本症例のように拡張した静脈瘤が破裂することによって下部消化管出血を呈した症例はこれまでに報告がない。また、外科的治療や血管塞栓術が選択肢となるが治療方法の決定について定まった見解はない。本症例を提示し、過去の症例から治療方法について考察を行う。
【臨床経過】68歳男性。既往にプロテインS欠損症がありワルファリンを内服中。2か月前より水様便が出現し時折血便も認めていた。当院へ転送される前日に自宅で大量の血便を認めたため救急要請となり、前医へ搬送され入院となったが、血便の持続とショックバイタルサインのため当院へ転院搬送となった。病着時は会話可能であったが、血圧 78/41mmHg、脈拍107回/分と低血圧と頻脈を認めた。血液検査ではHb6.4 g/dlの貧血とPT-INR4.37と凝固障害を認めた。造影CT検査では、下腸間膜動脈の末梢に静脈へとつながる異常血管を認め、拡張した辺縁静脈が直腸S状部から横行結腸に沿って走行し、一部が造影剤の血管外漏出像を伴って下行結腸に接していた。直腸からS状結腸は浮腫状の壁肥厚と周囲には腹水を認めた。下腸間膜動脈から血管造影を行うと、CTと一致する異常血管と拡張した下腸間膜静脈を認めた。下腸間膜動静脈瘻と静脈瘤破裂による消化管出血と診断し、血管塞栓術による治療へと移行した。動静脈瘻の近位部を NBCA/リピオドールで塞栓し、塞栓後に動静脈瘻の血流減弱を認めた。血管塞栓術後は血便や貧血の進行はなく、腸管虚血を示唆する症状・所見は認めなかった。2週間後と4週間後の造影CT検査では塞栓部位より末梢の拡張した辺縁静脈は血栓化しており、経口摂取下でも腹部症状は再燃しなかった。
【結論】血管塞栓術は外科的治療よりも侵襲性が低く、過去の症例でも血管塞栓術の奏功例が散見される。血管塞栓術は動静脈瘻の血流が比較的ゆっくりで血管径が小さい場合には有効であると考えられるが、塞栓物質が末梢側へ流出する可能性や塞栓によって腸管虚血が出現・悪化するリスクがある。異常血管の処理と虚血した腸管の切除に関しては外科的治療の方がより確実性が高い。血管塞栓術が選択肢とならない場合や血管塞栓術が奏功しなかった場合に外科的治療を考慮する。