[P21-4] SDA向精神薬の影響によるドパミン抵抗性ショックの一例
ドパミン受容体およびセロトニン受容体遮断作用を有する向精神薬は多数存在しているが,今回その薬理作用によりドパミン抵抗性ショックに陥った症例を経験したので報告する.【症例】60歳,女性.統合失調症の診断で精神科病院に通院中であり,SDA系向精神薬であるゾテピンとペロスピロンが処方されていた.息子の結婚式が近くなり,気分が落ち込み当搬入数日前から食欲が減退し水分摂取量も少なくなっていた.X日19時頃,自宅で意識状態が低下し体動困難となったため夫が救急要請.救急隊接触時,E1V1M4の意識障害があり血圧53/35mmHgのショックバイタルで当院に搬送となった.来院時BP 69/47mmHg,PR 84bpm,血液検査ではCr 2.06mg/dlの腎機能障害を認めた.細胞外液の輸液療法に加え,DOAを8μg/kg/minまで投与したが血圧低値が持続した.来院3時間後よりノルアドレナリンを0.05μg/kg/minで併用開始したところ,徐々に血圧の上昇を認めた.第3病日の血液検査では腎機能は改善し,DOAおよびノルアドレナリンは中止可能となり,第5病日に自宅退院となった.【考察】ゾテピンおよびペロスピロンはドパミン受容体およびセロトニン受容体遮断薬であるが,ゾテピンはα受容体遮断作用も併せもつ向精神薬である.本症例では食欲減退による脱水から腎機能が低下し,薬剤の血中濃度が上昇し薬理作用が増強したと考えられた.