[P21-5] 高山病が疑われたが褐色細胞腫クリーゼと診断した1例
【はじめに】登山中に呼吸困難を発症し、高山病が疑われたが褐色細胞腫クリーゼと診断した例を経験したため報告する。【症例】特記すべき既往歴のない55歳男性。登山中に呼吸困難を発症し高山病が疑われ、翌朝に当院へ県警ヘリで搬送された。来院時、呼吸回数42回/分の頻呼吸、SpO2 90%(マスク6L/分)の低酸素血症を認め、画像所見では高地肺水腫と矛盾しない所見であり、高地肺水腫と診断し、ASVによる陽圧換気を開始した。しかし、徐々に不穏となり血圧115/92mmHg、脈拍163回/分とショックを来したため、気管挿管、人工呼吸器管理を開始した。心エコーで左室基部の局所的な壁運動の低下と心尖部の過収縮を認め、逆たこつぼ型心筋症様の所見だった。心原性ショックと判断し循環作動薬開始、PCPS開始、CHDF施行し、集中治療室管理とした。受診時の腹部CTで4cm大の左副腎腫瘍を認めていたことや過去に四肢の色調不良や冷感を訴えていたことから、褐色細胞腫クリーゼが疑われた。徐々に循環作動薬は減量し、入院3日には循環作動薬中止したが循環動態は安定していると判断し、PCPS離脱した。しかし、同日夜間に血圧低下あり、循環作動薬を再開し、再度PCPS開始した。入院4日からα-blocker、β-blocker開始したが、徐々に循環動態は悪化した。敗血症と判断し、抗菌薬開始したが、入院6日に死亡した。病理解剖を薦めるも承諾得られず未施行。後日、受診時に採取した尿で尿中カテコラミン高値であり、診断基準は満たしていないが褐色細胞腫クリーゼによる多臓器不全と診断した。【結語】褐色細胞腫による多臓器不全を経験した。外科的治療につなげるために内科的治療を行ったが、循環動態改善できず救命できなかった。コントロール不良の褐色細胞腫クリーゼに対する治療法の確立が待たれる。