第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

中枢神経

[P23] 一般演題・ポスター23
中枢神経04

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:中尾 慎一(近畿大学医学部麻酔科学教室)

[P23-2] 重度の意識障害を呈し、集中治療管理を要したRCVSの1例

池田 貴夫, 大漉 祐己, 新垣 大智, 藤井 健一郎, 篠原 潤, 神宮司 成弘, 植西 憲達, 岩田 充永 (藤田医科大学病院 救急総合内科)

【背景】RCVS(Reversible cerebral vasoconstriction syndromes)は繰り返す雷鳴頭痛が特徴的な可逆性脳血管攣縮を来す疾患であり、予後は大半例で良好とされる。今回昏睡を呈し集中治療管理を要したRCVSの1例を経験したため報告する。【臨床経過】61歳女性。入院前日に倦怠感・失語で救急外来を受診。頭部MRIなど諸検査を施行したが急性期脳梗塞や脳血管異常を含めた原因を認めなかった。入院当日、意識障害で救急搬送となり意識レベルはGCSでE1V1M1、瞳孔は両側4mmで対光反射あり、Babinski反射は陰性であった。再検の頭部CTで右中心溝にくも膜下出血(SAH)を認め、頭部MRAでは右MCA水平部遠位以遠の描出不良を認め、狭窄や灌流低下が疑われた。脳動脈瘤は認めなかった。また、右頭頂葉・後頭葉・側頭葉表面に硬膜下血腫を認めた。CT灌流画像では右半球に脳血液量・脳血流量の低下を認めた。昏睡・肺炎による呼吸不全、血圧管理、鎮静による安静、持続脳波モニタリングのためICU入室となった。第8病日のCT灌流画像では右半球の血液量・血流量低下は改善し、右MCAの描出不良も改善した。第9病日に意識レベルがE4VTM6まで改善した。同日の頭部MRIでは右MCAの分水嶺領域にDWIで高信号、ADCで高~等信号の混在を認め、血管浮腫が疑われた。頭部MRI所見の推移などからRCVSと診断した。【考察】頭痛を認めないRCVSは10%程度で、脳血管攣縮や血管の破綻により脳浮腫・脳梗塞・脳出血を起こし、片麻痺・視力障害・失語などの神経巣症状を伴うことがある。昏睡を来すのは5%未満である。初診時の頭部CT・MRIは30-70%が正常であり、RCVSを疑った際は繰り返し画像検査を行う必要がある。本症例は、画像検査を繰り返すごとにSAH・脳梗塞・硬膜下血腫といった多彩な病変が出現した。RCVSは中枢神経原発血管炎(PACNS)や動脈瘤性SAHの脳血管攣縮期との鑑別が重要となるが、ステロイドを用いることなく脳血流や血管狭窄の改善を認め、血管浮腫性病変であることからRCVSの診断に辿り着いた。【結論】RCVSは多彩な症状を来す疾患であり、初診時から数日後に意識レベルの変化、痙攣や麻痺の出現など状態が急激に悪化しうる。鎮静下ではその変化の覚知が遅れる恐れがあり、日々の神経学的評価が重要となる。ICUで頻用されるステロイドはRCVSの予後を悪化させることがあり、また鑑別となるPACNSをマスクする可能性があるため使用に際して注意を要する。