第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

新生児・小児

[P24] 一般演題・ポスター24
新生児・小児02

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:谷 昌憲(埼玉県立小児医療センター集中治療科)

[P24-2] 小児生体肝移植術直後に気管支攣縮をきたし、大量ステロイドが著効した一症例

深川 博志, 白木 敦子, 溝田 敏幸, 瀬川 一 (京都大学 医学部 附属病院 麻酔科)

【背景】周術期の気管支攣縮には揮発性吸入麻酔薬や少量ステロイドで対処する場合が多い。今回我々は、肝移植術直後に発症した重篤な気管支攣縮に対し大量ステロイドが著効した症例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は6ヶ月女児、身長63cm、体重6kg。生後1か月検診で白色便をみとめ、胆道閉鎖症と診断された。前医で肝門部空腸吻合術が行われたが、減黄不良のため当院で生体肝移植術が行われた。他に既往歴なし。再灌流前にメチルプレドニゾロン62mgを投与した。再灌流90分後、誘因なく突然気道内圧が上昇し喘鳴を聴取した。気管支攣縮を疑い、吸入セボフルラン濃度の増量、エピネフリン0.03mg皮下注、ツロブテロール製剤貼付したところ10分後には気道内圧上昇がおさまった。手術終了直前(最初の発作の4時間後)にも同様の状況が生じ、エピネフリン0.03mg皮下注で改善した。手術終了後セボフルランの投与を終了し、ICUへ搬送した。手術室退室時の換気設定は、従圧式、PEEP 3cmH2O, PIP 30cmH2O, f33/分で、一回換気量は約60mL、PaCO2 は44mmHgであった。ICU入室後、同様の換気設定で人工呼吸を再開したが、一回換気量が10mLほどしか得られず、用手換気でも換気困難だった。直ちにエピネフリン0.03mg皮下注とヒドロコルチゾン20mg静注を行ったが症状は改善せず、入室30分後にはPaCO2 170mmHgとなった。麻酔器をICUに搬入し、セボフルラン吸入、プロテカロール吸入を開始すると、徐々に換気可能となったが30分後でも40ml の一回換気量を得るのに35cmH2Oの PIPを要し、カプノグラムは著しい閉塞性パターンであった。その時点で、小児科医の提案でヒドロコルチゾン100mgを追加投与したところ数分後に換気状況が劇的に改善し、PIP 20cmH2O程度で充分な換気量が得られるようになりPaCO2も79mmHgまで低下した。翌日にはセボフルラン吸入を中止、術後2日目に抜管、8日目にICU退室、67日目に軽快退院となった。再発作はみとめなかった。【結論】手術直後に原因不明の重度気管支攣縮をきたし、大量ステロイド投与により劇的に改善した一症例を経験した。小児の喘息重症発作では、β2刺激薬吸入、ヒドロコルチゾン5-7mg/kg静注が推奨されているが、本症例ではいずれも効果が限定的であり、ヒドロコルチゾン大量投与が著効した。