[P26-1] アゾール系抗真菌薬に治療抵抗性を示したCandida albicans感染症の一例
Candida albicansによる侵襲性カンジダ症では、感受性同定後にアゾール系抗真菌薬へのstep-downが推奨されている。今回我々は、アゾール系に治療抵抗性を示し、キャンディン系への変更によって軽快した侵襲性カンジダ症の症例を経験したので報告する。 症例は75歳女性、筋萎縮性側索硬化症で当院通院中、胃瘻周囲炎を併発したため入院となった。入院後は造設済みの中心静脈ポートより静脈栄養を開始した。胃瘻周囲炎は軽快したが入院13日目より発熱が持続したため、中心静脈ポート感染を疑い17日目にポートを抜去したが、同日ショック状態となったためICU入室となった。昇圧剤と人工呼吸による全身管理、メロペネムとリネゾリドの投与を開始した。ICU入室4日目、入室前日の血清β-Dグルカン著明高値(6420pg/mL)が判明したため真菌感染症と診断し、抗菌薬をミカファンギン(MCFG) 100mg/dayに変更した。入室6日目、起炎菌がCandida albicansであることが判明し感受性試験結果も踏まえてフルコナゾール(FLCZ)に変更した。投与量は体重(35kg)と腎機能障害を考慮し200mg/dayとした。以後、腎機能、凝固系を含む臓器障害が遷延、胸部CT検査では両側肺野に血行性散布を疑う多発性結節陰影を認めた。血液培養から真菌の検出が続いたため、入室18日目、治療効果不十分と判断しFLCZをMCFG 100mg/dayに変更したところ、以降は臓器障害、肺結節陰影も徐々に改善し、入室22日目を最後に血液培養は陰転化した。 本症例は、中心静脈ポート感染に起因する侵襲性カンジダ症と考えられるが、感染性心内膜炎や深部膿瘍形成は否定的であった。β-Dグルカンが著明高値であったことから菌量が非常に多かったため、静菌的に作用するFLCZでは抗菌力が不十分であったことが菌血症遷延の原因と推察された。侵襲性カンジダ症では、感受性があってもアゾール系抗真菌薬では治療抵抗性を示すことがあるので、その際は速やかに殺菌的に作用する抗菌薬に変更する必要があることが示唆された。