第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

感染・敗血症 症例

[P26] 一般演題・ポスター26
感染・敗血症 症例05

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場6 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:桑名 司(日本大学医学部 救急医学)

[P26-2] 治療に難渋した侵襲性クレブシエラ感染症の1例

矢口 慎也, 伊藤 勝博 (弘前大学医学部附属病院 高度救命救急センター)

【背景】侵襲性クレブシエラ感染症はアジアを中心に報告され、肝膿瘍に眼内炎、中枢神経感染症、壊死性筋膜炎などを合併し、重篤な後遺症を残したり致死的な経過を辿る重症感染症である。今回、クレブシエラによる肝膿瘍に髄膜炎、脳室内膿瘍、多発性脳膿瘍を合併し、治療に難渋した1例を経験したので報告する。【症例】患者:66歳、女性、主訴:発熱、意識障害【臨床経過】3月某日発熱あり、近医受診し内服薬処方。翌日、翌々日も発熱持続し、抗菌薬の点滴を受け帰宅。4日目に頭痛、倦怠感も出現し、CRP32.1と高値のため入院。感染源不明で、血培採取後にセフォゾプラン投与開始。5日目、腹部超音波検査で異常なし。6日目、意識障害(JCS 10)が出現。CTで脳浮腫を認め、肝機能障害も出現したため、脳炎疑いで当院紹介となった。初診時現症:血圧139/89mmHg、脈拍71/分、呼吸数27/分、体温37.2℃、GCS13(E3V4M6)CT:脳室拡大、脳室周囲白質の濃度低下、肝右葉後区に多房性嚢胞病変あり。髄液検査から細菌感染が示唆され、肝膿瘍、髄膜炎、脳室内膿瘍、多発性脳膿瘍の診断となった。髄膜炎治療としてステロイド、抗菌薬(セフトリアキソン、バンコマイシン、アンピシリン、アシクロビル)投与開始。第6病日、意識障害が増悪(GCS11(E3V3M5))し、CTで肝膿瘍が増大傾向のため、経皮的肝膿瘍ドレナージ術施行。抗菌薬はメトロニダゾール追加し、ESBL産生菌を考慮しアンピシリンをメロペネムに変更した。第8病日、肝膿瘍の培養でクレブシエラが検出され、侵襲性クレブシエラ感染症が示唆された。CTで腹腔内膿瘍を認め、第10病日、開腹ドレナージ術を施行。第13病日、髄液検査は改善傾向だったが、第17病日MRIで脳室内膿瘍は著変なく、水頭症の増悪を認めた。第23病日、意識障害も増悪(GCS6(E1V1M4))したため気管挿管、脳室ドレナージ術を施行し、ゲンタマイシンを3日間髄注投与。第24病日、気管切開術施行。人工呼吸器は離脱したが、意識障害の改善は困難と予想され、第38病日前医に転院。第59病日永眠された。【結論】治療に難渋した侵襲性クレブシエラ感染症の1例を経験した。肝膿瘍の感染巣コントロールは良好だったが、中枢神経感染症により致死的な経過を辿った。肝膿瘍を認めた際には、侵襲性クレブシエラ感染症による転移性感染巣も考慮した全身検索と早期治療の必要性が示唆された。