[P26-5] 血液培養、気管支肺胞洗浄液培養検査でEnteroccocus faeciumを検出した肺炎の1例
【背景】院内発生の肺炎において腸球菌が原因菌となることは非常に稀である。今回我々は、胸腺腫に合併した低ガンマグロブリン血症(good症候群)を基礎疾患にもつ免疫不全があり、ニューモシチス肺炎の治療中に細菌性肺炎を合併し、急速に呼吸不全が進行した1例を経験したので報告する。【臨床経過】68歳男性、3日前から続く呼吸困難と酸素化の低下で当科外来を受診した。血液検査でβ-Dグルカンの著明な上昇があり、胸部単純CT検査で両肺に多発スリガラス影がみられたため、ニューモシスチス肺炎の診断で、ST合剤の内服を開始した。しかし、治療開始5日目に酸素化の低下が進行し、胸部CT検査でスリガラス影の増悪と左肺に新たに浸潤影がみられたため、同日から人工呼吸器管理目的にICUに入室となった。ICUに入室後、細菌性肺炎の合併を考慮してメロペネム+レボフロキサシンの投与を開始したが、呼吸状態の改善はみられなかった。入室5日目に施行した気管支肺胞洗浄液の培養検査でEnteroccocus faeciumが検出されたため、入室7日目よりセフェピム+テイコプラニンの投与を開始した。その後、呼吸不全に伴う多臓器不全が進行し、入室10日目に死亡した。入室7日目に採取した血液培養検体からは肺胞洗浄液と同様にEnteroccocus faeciumが検出された。【結語】本症例は抗MRSA薬が使用されていない状態での感染増悪であり、もっと早期の抗菌薬変更を考慮してよかった症例とも考えらえる。免疫不全の患者はEnteroccocus faeciumなど弱毒菌による日和見感染のリスクファクターとなる。免疫不全の患者で細菌感染症が疑われる場合は、BAL所見など局所検体も活用して広く起因菌を想定し診断を詰める努力もしつつ、抗菌薬使用歴やホストの易感染性を考慮した抗菌薬選択が重要である。