[P27-2] 誤嚥後抗生剤を投与しなかったが、肺炎を発症せずに経過した一例
【背景】食物等、異物を誤嚥した症例では肺炎を発症しているか否かに関わらず、抗生剤が使用されることが多い。しかしその臨床上の有益性に関しては確立した結論は得られていない。【臨床経過】85歳女性。意識障害のため入所施設より救急搬送された。来院時JCS200、GCS1-1-3の意識障害が認められた。いびき様呼吸など舌根沈下を示唆する所見はなく、静脈血ガス検査でPH7.35, CO2 48.5mmHgと二酸化炭素貯留は認められなかったため、初療室で気道確保目的の挿管は行わなかった。頭部CTとMRIでは意識障害の原因を特定する所見は認められなかった。胸部CTで気管・右主気管支に食物残渣を疑わせる異物を認めたが、肺野に肺炎を示唆する浸潤影は認められなかった。施設入所中の高齢者であり、家族と相談して意識や呼吸状態が悪化した場合挿管は行わない方針となった。発熱や喀痰排出など肺炎を示唆する臨床症状が出現したら抗生剤を開始する方針とした。入院後そのような症状は出現せず経過した。入院2日目にJCS2まで意識障害は改善した。入院5日目より食事摂取可能となり、食事開始後も誤嚥症状は認めていない。今後リハビリ継続のため転院予定となっている。【結論】誤嚥が認められた場合であっても必ずしも肺炎を発症するとは限らない。抗生剤投与の妥当性に関して文献的考察を加えて報告する。