第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

感染・敗血症 症例

[P27] 一般演題・ポスター27
感染・敗血症 症例06

2019年3月1日(金) 14:00 〜 15:00 ポスター会場7 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小谷 祐樹(医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 集中治療科)

[P27-5] フルニエ壊疽に対して広範なデブリドマンと集学的治療により救命し得た高度肥満の1症例

芝原 司馬, 小坂 眞司, 菊地 まゆ, 大城 拓也, 齊藤 眞樹子, 角田 美保子, 康 美理, 齋藤 倫子, 矢口 有乃 (東京女子医科大学 救急医学)

【背景】肥満患者の集中治療管理においては、気道呼吸管理、栄養管理、血栓予防等、非肥満患者と比較してより慎重な管理が必要とされる。今回フルニエ壊疽(Fournier’s gangrene)の高度肥満症例に対して広範なデブリドマンとともに、特に呼吸管理を慎重に行うことで、人工呼吸管理期間を最小限に留め良好な転帰を得た症例を経験した。【臨床経過】高度肥満(身長 180 cm、体重 155 kg、BMI 47.8)の53 歳男性。未治療の高血圧以外に既往歴なし。4 日前から陰部、右鼠径部、右大腿近位部の発赤、疼痛が出現し、38 ℃台の発熱を認めた。解熱鎮痛剤内服し経過観察するも症状改善認めず、当院救急搬送された。来院時意識清明、体温 38.8 ℃、血圧 192/88 mmHg、脈拍 120 bpm、呼吸数 24 /min、SpO2 94 %(room air)。右陰部、鼡径部、大腿近位に発赤、熱感、圧痛を認め、右鼠径部に硬結、握雪感を触知した。血液検査上WBC 22250 /μL、CRP 40.14 mg/dLと炎症反応上昇を認め、HbA1c 13.1 %と新規の糖尿病所見を認めた。腹骨盤部単純CTで右下腹部側方、鼠径、陰部、大腿内側皮下にガス像、脂肪織混濁を認め、フルニエ壊疽と診断した。LRINEC scoreは8 点だった。全身麻酔下で創部切開排膿を行い、右上前腸骨棘下から鼠径靭帯に沿う形で内側に皮膚切開し、色調不良な皮下脂肪や壊死筋膜を切除した。内側は陰嚢まで発赤を認めたため、陰嚢も切開した。右精索を同定、温存し、壊死組織を切除した。術後はICUでの集中治療管理とし、抗生剤(VCM, MEPM)、グロブリン製剤、AT-3 製剤投与し、サイトカイン除去目的にIRRTを第1,2 病日に施行した。第5 病日に陰嚢部発赤増悪を認めたため、同部位のデブリドマンを追加した。経過中の人工呼吸管理として、high PEEPを用い気道内圧高値を許容して肺胞のリクルートメントを行うとともに頻回に体位変換で無気肺を行い、第12 病日人工呼吸器離脱、抜管した。創部感染徴候の鎮静化に伴い第20 病日より創部のNPWT開始し、第46 病日に終了した。【結論】肥満患者の胸郭コンプライアンス低下、背側肺虚脱に対して、high PEEPを用いた呼吸管理及び頻回の体位変換により速やかに人工呼吸器離脱し、良好な転帰を得た。