第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P29] 一般演題・ポスター29
血液・凝固 症例02

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:40 ポスター会場9 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:加藤 崇央(埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科)

[P29-1] 発症早期に出血性脳梗塞と横行結腸梗塞を呈した結節性多発動脈炎の一例

溝田 敏幸, 甲斐 慎一, 瀬川 一 (京都大学医学部附属病院 麻酔科)

【背景】結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)は、全身における中小動脈の壊死性血管炎を主病態とする疾患である。発熱や皮疹などの非特異的な症状で発症する場合が多いが、重症例では重要臓器の梗塞を呈する。今回、発症早期に出血性脳梗塞と横行結腸梗塞を呈したPNの症例を経験したので報告する。【臨床経過】特に既往のない39歳男性。平成30年5月に左手尺側のしびれ感と腹痛を主訴として近医を受診した。矢状静脈洞、腹部大動脈、大腿動脈、下大静脈、門脈の血栓と血小板減少を認めたため、第3病日に精査および全身管理目的で当院へ転院した。第4病日に急激な意識レベル低下を生じ、右頭頂葉の出血性脳梗塞を認めたため開頭血腫除去術・外減圧術を施行し術後集中治療室に入室した。動静脈の両方に血栓を形成し激烈な経過をたどっていることから、劇症型抗リン脂質抗体症候群を疑い術後から血漿交換を開始した。第5病日に横行結腸の虚血性壊死に対し開腹横行結腸切除術・上行結腸人工肛門造設術を施行した。第6病日、抗リン脂質抗体は陰性で、感染性心内膜炎や左房粘液腫など多発塞栓を生じる疾患を示唆する所見も認めず、脳梗塞や結腸梗塞の原因は不明であったが、さらなる血栓形成を予防するため血漿交換に加えヘパリン持続投与を開始した。その後新たな血栓形成や頭蓋内血腫の増悪は認めず血小板数も増加に転じた。第10病日に抜管、第13病日に集中治療室を退室した。横行結腸の切除標本で血栓の詰まった血管部位に血管炎の所見を認め、フィブリノイド壊死もみられたことからPNと診断し、プレドニゾロン点滴静注とエンドキサンパルス療法を開始した。出血性脳梗塞の後遺症として左半側空間無視が残ったが明らかな運動麻痺なく回復し、第89病日に退院した。【結論】発症早期に出血性脳梗塞と横行結腸梗塞を呈したPNの症例を経験した。PNは疾患特異的なマーカーが存在しないため診断に苦慮したが、診断未確定のまま開始した血漿交換と抗凝固療法が奏功したと考えられた。同時に複数の臓器に生じる虚血や梗塞の鑑別診断としてPNのような血管炎症候群を念頭におく必要がある。