[P29-2] 頭部外傷児の集中治療管理中に血小板減少の原因検索に苦慮した1例
2歳6か月の男児。交通事故により急性硬膜下血腫、脳挫傷を受傷し、緊急開頭血腫除去術・外減圧術が施行されICU入室となった。脳保護目的に低体温療法を行い、高度代謝性アシドーシス、高カリウム血症の補正のためCHDFを導入して集学的管理を行った。高度頭蓋内圧亢進状態が数日継続したが、次第にコントロールが可能となり、児は復温され、全身状態は落ち着きつつあった。しかしながら、POD11頃より直接動脈圧ラインの頻回の閉塞、CHDFの回路内血栓、血小板の減少を認めた。患者に明らかな血栓塞栓症状を認めなかったが、血小板減少は進行し、3日間で28.0万/μLから4.2万/μLへと減少した。感染兆候は無く、急性期DIC診断基準では、DIC診断には至らず、ヘパリン起因性血小板減少(HIT)を第一に考え(4Ts:6点)。鑑別診断として、血栓性血小板減少症、血球貪食症候群の可能性も考慮したが、いずれも診断に至るような検査所見は得られなかった。国立循環器病センターにHIT抗体の精査を依頼したが、結果が得られるまでの間も血小板減少は進行した。HITに準じたアルガトロバンの投与は、頭蓋内出血を助長するものとして見送られ、対症的にメシル酸ナファモスタットの投与だけが行われた。その後、IgG検査では抗体価OD 0.074(Cutoff 0.400)と陰性であり、またFunctional assayにおいても血小板活性化やmicroparticleの産生を認めずHITの可能性は否定された。本症例の血小板減少の原因は不明のままであったが、結果的には、メシル酸ナファモスタットによる対症療法のみで、回復を認めICU入室後25日目に退室となった。本症例に関して、今回、皆様のご意見ご教示を頂きたい。