[P29-4] ニボルマブ使用後にウイルス感染による内因系凝固の異常な活性の経過をたどったと考えられる1症例
背景】凝固活性には2つの経路があり止血は組織因子により開始される外因系が活性化される一方、異物面などとの接触や生体で陰性荷電物質が放出されると内因系の活性による血栓形成により異物を閉じ込め排除する宿主防御のシステム(immunothrombosis)として機能しており、ウロキナーゼの活性化も認められる。今回腎細胞癌に対しニボルマブの使用歴があり、ウイルス感染を契機に内因系凝固系の異常な活性をたどったと考えられる症例を経験したので報告する。【臨床経過】4ヶ月前に腎細胞癌に対しニボルマブを2ヶ月間使用されたが、間質性肺炎の発症により使用を終了していた。10日前にパゾパニブを導入されていた。第1病日40℃の発熱を認め、第2病日に倦怠感、下痢、意識障害を認め入院加療となった。感染を疑われ抗菌薬の投与が開始されたが呼吸不全の進行と皮膚症状の出現により集学的治療のため第8病日に当院搬送となった。搬送時の血液検査では、血小板数67000/mm3、フィブリノーゲン30mg/dl、プロトロンビン時間は測定不能であったが、活性化部分トロンボプラスチン時間は26.3秒であった。TAT114.4mcg/l、SF48.1mcg/mlと凝固亢進を認め、PIC7.4mcg/mlと線溶系の亢進も認めた。凝固系・線溶系の活性化とAPTTより内因系凝固活性が考えられた。第1病日の血液・尿培養は陰性であり、経過からウイルス性腸炎と考えられた。またニボルマブはCD8陽性細胞を活性化を継続する作用を有し、サイトカイン放出症候群を呈したとする報告がある。今症例ではウイルス性感染に対し内因系凝固活性が働き、ニボルマブによる多量のサイトカインが放出される状況が修飾因子となり、異常な内因系凝固活性が見られたと考えられた。【結論】ニボルマブ使用後、ウイルス感染により内因系凝固活性の異常な亢進による凝固異常を認めた。