第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P29] 一般演題・ポスター29
血液・凝固 症例02

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:40 PM ポスター会場9 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:加藤 崇央(埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科)

[P29-5] 後天性血友病A寛解後の冠動脈バイパス術に対しトロンボエラストメトリーを用いて周術期管理を行った1症例

佐藤 正顕1, 遠藤 暢人1, 幡生 洋介1, 徳永 元秀1, 配島 功成2, 工藤 樹彦2 (1.国立病院機構埼玉病院 麻酔科, 2.国立病院機構埼玉病院 心臓血管外科)

【背景】後天性血友病A(AHA)は後天的に第8因子に対する自己抗体が形成され、出血傾向をきたす非常に稀な疾患で、症状は重篤なことが多く死亡率が高い。治療として免疫抑制療法を行うが、寛解した後に再発する場合がある。AHAでは迅速な診断と適切な治療が予後を左右するが、発症要因の一つに手術があげられるため、寛解後も周術期は厳密なモニタリングが望ましい。AHA発症時は出血症状に加えて活性化トロンボプラスチン時間(APTT)が延長するが、心臓外科周術期では使用するヘパリンの影響、出血による凝固因子低下などによってもAPTTは延長するため、出血原因の鑑別が困難となる。今回、AHA寛解後のオフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)に対しトロンボエラストメトリー (ROTEM)を用いて周術期管理を行ったので報告する。【症例】70代男性。冠動脈3枝病変に対してOPCABが予定された。既往に8年前S状結腸癌術後に後天性血友病Aを発症し、免疫抑制療法により寛解となった。【経過】術前のAPTT、第8因子活性、第8因子インヒビターは正常であった。周術期にAHAが再発した場合に備え、活性化プロトロンビン複合体を迅速に取り寄せられるように手配した。術中の抗凝固モニターは活性化凝固時間(ACT)に加えて、ROTEMを用いた。ROTEMはINTEM、EXTEM、FIBTEM、HEPTEMで評価を行った。ヘパリン投与前の凝固検査は正常であった。ヘパリン投与後はACTの延長がみられ、ROTEMではINTEMにおけるclotting timeは延長したが、その他の検査項目は正常であったため、凝固系に異常は無いと考えられた。プロタミン投与後はROTEMにおいてヘパリン残存はなく、凝固因子が経時的に低下傾向、AHAの再発は否定的、という所見であった。出血コントロールは可能であったため新鮮凍結血漿などの輸血は行わなかった。術後はACTやAPTTの延長は無く、出血傾向も無かったため、AHAの再発は無いと判断しROTEMは使用しなかった。【結語】AHA寛解後のOPCABに対し、周術期を通して身体所見に合わせてROTEMを使用することで、AHAの再発、使用したヘパリンの影響、開心術に伴う凝固異常を鑑別することが可能であった。