[P3-3] めまいが主訴で救急搬送された解離性胸部大動脈による脳梗塞の一症例
【背景】解離性胸部大動脈瘤(DTAA)による脳梗塞の合併頻度は,3~7%とされる.めまいで動けないとの主訴で救急搬送された患者が,DTAAによる塞栓性脳梗塞だった症例を経験したので報告する.開示すべきCOIはない.【臨床経過】患者:70歳代男性,家族は旅行中で発症時は1人だった.主訴:めまいで動けない.既往歴:脳梗塞,高血圧症.服薬歴:カンデサルタン,シロスタゾール.現病歴:救急搬送前日17時頃,庭で回転性目眩を起こし倒れた.自分でベッドに戻った.その後の記憶はない.翌朝,友人が訪問した際にベッド上で動けなくなった本人を発見し救急要請した.所見:JCS:2,血圧:158/93mmHg,SpO2:95%,呼吸回数:15回/分,体温:36.7℃.瞳孔所見:瞳孔径左右差なし:3mm,対光反射:迅速,眼振はない.身体所見:横向きになると気分不良となる.前額部と両膝に擦過傷,両腕に皮下出血を多数認めた.頭痛はない.また,胸痛や背部痛の訴えはない.明らかな顔面麻痺や四肢麻痺はない.血液検査:白血球数:12770 /μL,血色素量:12.4 g/dL,血小板数:12.3 万/μL,PT:15.3 秒,PT活性:54.8 %,PT INR 1.45,APTT 38.4 秒,CPK 506 U/L,尿素窒素:54mg/dL,Cre:4.7 mg/dL,血糖:121 mg/dL,CRP:7.45 mg/dL.CXP:CTR:54,軽度の心肥大と左肺野の透過性の低下および上縦隔陰影の拡大を認めた.ECG:心拍数:71bpm,洞調律で心房細動を認めない.頭部CT:出血や骨折はない.陳旧性脳梗塞が多発していた.頭部MRI:拡散強調画像で左右の小脳~大脳に少径の高信号が多発している.以上より,両側に脳梗塞が散在していることや不整脈を認めないこと,上縦隔陰影拡大のため胸腹部CTを追加した.胸腹部CT:Stanford A型のDTAAと心タンポナーデを認めた.USG:心嚢液貯留や大動脈逆流は不明瞭だった.intimal flapありStanford A型解離で血栓閉塞はしていない.経過:Stanford A型のDTAAで緊急手術の適応があると診断し,近医心臓血管外科に転院した.10日後に腎機能が改善し,オープンステントで弓部置換術が行われた.術後7日目に脊髄梗塞の診断された.術後21日目に当院へリハビリテーション目的で転院した.【結果】DTAAは,胸痛や背部痛の訴えがない場合も4%程度あるとされる.また,脳血流の低下による意識障害や脳梗塞などで記憶がない可能性がある.脳梗塞が両側性の場合は,痛みの症状がなくともDTAAの検索を行うべきである。