[P31-2] 著明な血小板減少を来したマムシ咬傷の一例
【はじめに】マムシは九州以北の日本全土に分布し、マムシ咬傷の年間発生数は約3000件と推定されている。多くは軽症例であるが、重篤化する症例や死亡例も報告されている。著明な血小板減少を認めたマムシ咬傷症例を経験した為、報告する。【症例】66歳男性、庭先で右手をマムシと思われる蛇に咬まれ受傷した。右手示指に牙痕を2か所認め、マムシ咬傷と診断した。血液検査で血小板数0.9×104/mm3と減少を認めたが、凝固系の検査所見はPT-INRの軽度延長を認めるのみであった。腫脹範囲は右手関節におよび、明らかな出血傾向はなかった。直ちに乾燥ウマまむし抗毒素6000単位(以下、抗毒素)を投与し、約4時間後には血小板数10.5×104万/mm3と著明に改善した。以後症状は軽減し、第7病日に退院した。【考察】マムシ毒は多種類の酵素の複合体で、作用の一つに血小板凝集作用がある。本症例のように局所の腫脹が顕著でなく、著明な血小板減少をきたす症例はまれで、本邦での報告は数例のみである。いずれの症例でも抗毒素が投与され12時間以内には血小板数は正常域まで改善している。血小板減少に対して、新鮮血や血小板を輸血した症例がある一方で、本症例のように無輸血でも血小板増加が得られた報告もある。以上から我々は血小板減少のみを来したマムシ咬傷症例において抗毒素は血小板増加に有用であり、血小板輸血は必ずしも必要ではないと考える。【結語】著明な血小板減少を来したマムシ咬傷症例において、抗毒素が血小板数の回復に寄与した可能性がある。

