[P31-6] 全身性血栓疾患を背景に、IVCフィルター閉塞によるショックを呈し、カテーテル的血栓摘出術で救命した1例
【背景】下大静脈(IVC)フィルター閉塞は海外文献では3-8%と報告されているが、本邦では少なく、閉塞により緊急処置を要した症例の報告はさらに少ない。担癌患者、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)等を背景として生じたIVCフィルター閉塞によるショックに対し、経カテーテル的血栓摘出術を行い、その後にも心室内血栓やカテーテル先端の血栓が発見された1例を経験した。治療方針や血栓要因の検討を交えて、報告する。【臨床経過】54歳、白人痩せ型男性。喫煙歴なし。腰部悪性黒色腫、全身転移に対し、nivolumabによる加療で著明に縮小傾向であった。既往歴に無症候性の下肢血栓/肺塞栓(DVT/PE)(半年間リクシアナで加療)あり。原発巣に対する組織内照射目的で入院。CTにてDVT/PE再発の指摘あるも、無症候性であり予定通り組織内照射が行われた。施行後、D-dimer上昇を認め、day12にヘパリンを開始するも画像上DVT/PEの増悪あり、day18にIVCフィルターを留置した。day19に離床したがday20にショックとなり、集中治療室入室となった。入室時は血圧67/46、心拍数130bpmであり、補液負荷・カテコラミンに反応しなかった。画像上IVCフィルターの閉塞が疑われ、経カテーテル的血栓摘出術を施行し、IVC内に一部血流再開を確認した。HITにて、アルガトロバン投与を開始した。急性腎傷害に対し、腎代替療法を施行した。バイタルは徐々に改善したが、心エコーで左室内血栓とカテーテル先端に血栓が発見された。Day47に維持透析導入目的に転院した。【結論】本症例の血栓要因の背景として、担癌患者である他に、HITの発症、IVCフィルター留置まで離床を待ったことによる安静、放射線照射等の要素が加わり、IVCフィルターの閉塞に至ったと考えられた。欧米人であることから、proteinC/Sを検査したが、有意な異常は認めなかった。IVCフィルター閉塞の診断は血管造影がスタンダードだが、本症例では、CT所見、腹部エコー所見、カテコラミン不応性などが手がかりとなった。治療方針として、薬物療法、外科的治療、カテーテル血栓溶解療法などもあげられるが、確立されたものはないと思われる。各施設の環境や経験を鑑みて、治療方針を選択すべきと考えられる。