第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

産科・婦人科

[P33] 一般演題・ポスター33
産科・婦人科02

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:50 ポスター会場13 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:北浦 道夫(香川労災病院)

[P33-4] 適正な輸血量と循環作動薬使用により救命しえた子宮肉腫による高度貧血(Hb 1.9g/dl)

鎌田 創吉 (なにわ生野病院 心臓血管外科)

極度の貧血は急性・慢性にかかわらず生命に危険を及ぼす事態であり、心不全から心停止にいたる症例も散見される。ショック状態に陥る前に赤血球輸血を考慮すべきであるが、大量輸血により心不全や可逆性脳血管攣縮症候群をきたすことも知られており、循環管理下での適正な輸血量が求められる。今回子宮肉腫による高度貧血(Hb 1.9 g/dL)に対し、ICUにて循環作動薬併用下で貧血を徐々に補正することで、合併症なく救命しえた症例を経験した。症例は49歳女性。1か月前から月経過多が続くも、様子をみられていた。2週間前から体動時に動悸、息切れを自覚、増悪してきたため、救急搬送となった。来院時血圧は保たれていたが、SpO2 85%、眼瞼結膜は蒼白でHb 1.9 g/dlと高度の貧血を認めた。心エコー上Dd 56mmと心拡大の所見、下大静脈(IVC)は26mmと拡大し、三尖弁圧格差(TRPG) 40mmHgと肺高血圧の所見を認めるも、左室収縮機能(EF)は68%と保たれており、高心拍出性心不全と診断した。集中治療室に収容した後酸素 3L 投与、ノルアドレナリンによる昇圧開始した。また動脈圧ラインを挿入し、血行動態のモニタリングも行った。循環血液量が増加しており、入院後6日間フロセミドの持続点滴を行った。輸血はボリューム負荷となるため、1日濃厚赤血球2単位のみを3日間行うのみとし、入院4日目にはHb 8まで上昇した。血圧が安定したため、利尿及び後負荷軽減目的に入院4日目よりフルイトランの内服を開始した。入院6日目に一般病棟に転棟、貧血の精査を行った。骨盤部MRI検査で子宮底部に突出する子宮肉腫を認め、出血の原因と考えられた。以後止血剤の投与なしで出血はなく、入院15日目に退院、退院後も経過は概ね良好である。適正な輸血量と循環作動薬使用により救命しえた子宮肉腫による高度貧血の症例を経験した。高度貧血に伴う高心拍出性心不全に対しては、フロセミド、フルイトランなどの循環作動薬を使用しながら、最小限の輸血に留めることが血行動態の維持に重要と考えられた。慢性的に月経過多が続く場合は、臨床症状が乏しいため高度の貧血に陥る可能性があり、婦人科健診の重要性を広く普及していく必要性があると考えられた。