第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

産科・婦人科

[P33] 一般演題・ポスター33
産科・婦人科02

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場13 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:北浦 道夫(香川労災病院)

[P33-5] 巨大卵巣腫瘍の周術期管理に難渋した一例

白 健人, 足立 健彦, 宮崎 嘉也 (田附興風会 医学研究所北野病院 麻酔科・集中治療部)

【背景】一般に巨大卵巣腫瘍の周術期管理としては腫瘍内容物減少による循環動態の変動や深部静脈血栓症、肺塞栓症、再膨張性肺水腫などの呼吸、循環管理に注意すべきとされている。今回我々は巨大卵巣腫瘍術後に再膨張性肺水腫による呼吸不全や軟部組織感染症による敗血症性ショックを合併し、ICU管理が長期化した症例を経験した。【臨床経過】症例は特に既往のない未経妊未経産の29歳女性。高校卒業後、自宅で引きこもりを続けており家族と同居しているものの顔を合わせず食事摂取も不十分な生活をしていた。受診の2年前から腹部膨満感が出現し1年前から無月経や嘔吐、足部の難治性潰瘍などを自覚していた。腹部膨満感、呼吸困難のため自宅で動けなくなり当院に救急搬送された。受診時、巨大卵巣腫瘍による呼吸障害や慢性低栄養状態、右下腿の蜂窩織炎や褥瘡など様々な病態を合併しており同日緊急入院となった。呼吸管理目的に手術前日にICU入室となり入室翌日に巨大卵巣腫瘍摘出術を施行した。局所麻酔で腹水を緩徐に約26000mlドレナージした後、全身麻酔下に腫瘍摘出を行った。術中には大きなイベント認めず、病理所見では境界悪性粘液腺癌の診断であった。術後呼吸不全の可能性が考えられ、人工呼吸管理のままICU帰室とした。術後1日目から再膨張性肺水腫を認め、低血圧も遷延した。右下腿創部からStreptococcus dysgalactiaeが検出、多量の皮下膿瘍と広範囲の壊死組織を認め、重症軟部組織感染による敗血症性ショックの合併が考えられた。連日の洗浄とデブリドマンを施行し最終的にVAC療法を行った。術後12日目に抜管したが極度の筋力低下から自己排痰困難なため術後13日目に再挿管、術後20日目に気管切開を行った。感染コントロールや栄養状態の改善、さらにリハビリテーション介入し、術後23日目に人工呼吸器を離脱、術後26日目にICUを退室した。最終的に入院76日目に独歩で自宅退院に至った。【結論】巨大卵巣腫瘍術後に再膨張性肺水腫や重症軟部組織感染症、低栄養状態による神経疾患、筋力低下により長期のICU管理を要した症例を経験した。本症例をいくつかの文献的考察を加えて報告する。