第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

鎮痛・鎮静・せん妄 症例

[P34] 一般演題・ポスター34
鎮痛・鎮静・せん妄 症例01

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:山﨑 正記(京都府立医科大学附属病院集中治療部)

[P34-1] 術中大量出血からの回復期に、ハロペリドールによるカタトニアを発症した1例

中田 行洋1, 武智 健一2, 彭 懌2, 三喜 和明2, 清水 一郎2 (1.愛媛大学 医学部 麻酔科蘇生科, 2.松山赤十字病院麻酔科)

【背景】術中大量出血後からの回復期における意識障害の原因は様々である。術中大量出血後に、ハロペリドールによるカタトニアを考える意識障害を起こした1例を経験した。【臨床経過】70歳代の男性(身長165cm、体重57kg)の肺癌に対し、左肺全摘が行われた。術中に肺動脈損傷よりショックとなり、人工心肺下に肺動脈修復を要した。肺動脈損傷から人工心肺導入まで26分を要し、血圧及び脳波モニタ値の高度低下が約30分継続し、術中出血は8105mlであった。患者は人工呼吸のまま集中治療室に入室したが、入室30分後より四肢の運動、自発呼吸、自発開眼が認められプロポフォールで鎮静が開始された。術後1日の血液検査では凝固系などの問題は認めず、プロポフォール中止後もデクスメデトミジン使用下で十分な意思疎通が可能なため、気管チューブを抜管された。軽度の見当識障害があったが会話は可能で、明らかな神経学的後遺症は認めなかった。夜間に軽度の不穏があり、静脈路を触るなどの行動が見られたため、ハロペリドール5mgを緩徐に静脈投与したところ、投与終了後より開眼したまま一点を凝視し、時折下肢の屈曲進展を繰り返す以外に体動はほぼなくなった。術後2日目になっても同様の症状が継続し発語も認められないため、頭部MRI を施行するも明らかな急性期病変は認められなかった。脳外科、精神科による診察でハロペリドール投与以外の明らかな原因は指摘されなかった。意識障害は緩やかに回復し、術後3日目の昼にはほぼ術後1日目のレベルに回復した。経過中明らかな錐体外路症状は確認されず、発熱や筋逸脱酵素に関しては侵襲の大きい術後であるため、悪性症候群の存在は明らかとは言えなかった。患者は術後4日目集中治療室を退室し、化学療法を行い術後約2ヶ月で退院した。【結論】集中治療室における意識レベル低下の原因は、脳血管障害、低活動型せん妄など多岐にわたる。カタトニアは混迷・無動・姿勢保持などを起こす症候群で、ハロペリドール使用により誘発される可能性があるが集中治療領域での報告は少ない。今回の症例では、術中大量出血と血圧低下の中枢神経系への影響が背景に存在しハロペリドールへの感受性が亢進していた可能性がある。大量出血後からの回復期におけるハロペリドールの使用は注意を要する。