[P34-5] デクスメデトミジンが気管支喘息発作の軽減に有用であった気管支熱形成術の一例
【背景】 気管支熱形成術(Bronchial Thermoplasty:BT)は、経気管支鏡下に挿入したプローブで気管支平滑筋を熱変性させることで気管支喘息発作を軽減させる治療法で、右下葉、左下葉、両側上葉の3回に分け施行される。全身麻酔下のBTは咳反射がないため確実な処置ができる反面、侵襲が大きくなり喘息発作が起こりやすく、術後に集中治療を要することがある。発作の誘因として、治療による浮腫や気道炎症、気管挿管や気管支鏡操作の刺激による気道過敏性の亢進、処置時のストレスなどが挙げられる。今回、デクスメデトミジンによりBT後の喘息発作が軽減した1例を経験した。【症例】61歳の女性。55歳頃に気管支喘息と診断され治療を開始したが、吸入ステロイド、長時間作用型β2刺激薬でコントロール不良な重症持続型のため、全身麻酔下にBTが計画された。【臨床経過】初回・2回目:気管挿管下に右下葉、左下葉のBTを施行。処置終了後に声門上器具に変更し覚醒を試みたが、覚醒後に喘息発作を発症。アドレナリン0.1mg筋肉注射、ベタメタゾン2mg点滴静注、β2刺激薬吸入を行ったが、喘鳴が継続するためICU入室となった。再挿管も考慮したがICU入室後にデクスメデトミジンで鎮静し、アミノフィリン250mg点滴静注、ベタメタゾン2mg点滴静注、ステロイドとβ2刺激薬吸入を施行したところ、呼吸状態の改善を得られ、翌日にICU退室。3回目:セボフルランにデクスメデトミジンを術中から併用し、両側上葉のBTを施行した。処置終了後に声門上器具に変更し、β2刺激薬吸入を行った上で覚醒を試みたが、覚醒前に喘鳴を認めた。アドレナリン0.1mg筋肉注射を行い、徐々に喘鳴は軽快。覚醒後に声門上器具を抜去した。ICU入室後もデクスメデトミジンを継続し、アミノフィリン250mg点滴静注、ベタメタゾン2mg点滴静注、ステロイドとβ2刺激薬吸入を行い、翌日にICU退室。【結語】デクスメデトミジンの気管支攣縮抑制作用を示唆する研究もあり、鎮静作用による処置時のストレス軽減に加え、気管支攣縮抑制作用により術後の喘息発作を軽減することができたと考える。デクスメデトミジンはBT後の喘息発作軽減に有用であるかもしれない。