第46回日本集中治療医学会学術集会

Presentation information

一般演題(ポスター発表)

循環 研究

[P35] 一般演題・ポスター35
循環 研究

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:40 PM ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:澤村 匡史(済生会熊本病院集中治療室)

[P35-5] 敗血症患者の心房細動治療におけるβ遮断薬不応性予測因子の解析

松本 周平, 江頭 崇, 矢野 倫太郎, 井上 陽香, 松本 聡治朗, 東島 潮, 関野 元裕, 原 哲也 (長崎大学病院 集中治療部/麻酔科)

【背景】敗血症患者において心房細動は高頻度で発生し、ショック状態における循環管理をさらに困難にする。敗血症に伴う心房細動に関してコンセンサスの得られた治療法は確立されていないが、本邦では短時間作用型β遮断薬であるランジオロールが臨床使用可能であり、調節性に優れた薬理学的特徴から敗血症患者に広く用いられている。最近の知見からβ遮断薬は敗血症患者管理における有用性が期待されるが、敗血症患者における頻脈性不整脈はしばしば難治性であり、β遮断薬単剤で治療が困難な症例を良く経験する。これらの背景から本研究を立案した。【目的】敗血症患者の心房細動治療における、ランジオロール単独での治療が困難な症例の予測因子解析。【方法】本研究は後ろ向きコホート研究である。2013年4月から2018年5月までの間に敗血症によってICUに入室し、入室5日以内に心房細動治療が必要となった患者を対象とした。心房細動の治療は洞調律復帰より心拍数調節を第一目標とし、電解質補正等と並行して第一選択薬としてランジオロールの投与を開始した。ランジオロール単剤での治療が難しいと判断した場合、アミオダロンの持続投与を併用して管理を継続した。対象患者のうち、ランジオロール単剤で治療された群(L群)とアミオダロンが追加された群(LA群)において、患者背景や入室時検査所見、治療介入、重症度スコアを単変量解析で比較した。さらに「L群かLA群か」の二項変数を目的変数として多変量解析を行った。【結果】L群は50人、LA群は52人であり、8割の症例が入室24時間以内に治療が開始された。単変量解析において患者背景に有意差は認めなかった一方で、重症度や昇圧薬使用量、入室後体液バランスや血液浄化療法導入率に有意差を認めた。APACHE2スコア、ノルアドレナリン(NAD)投与量、ホスホジエステラーゼ3阻害薬使用、NT-proBNP、入室2日間の体液バランスを説明変数として選択し多変量解析を行ったところ、APACHE2(オッズ比1.1,95%CI1.02-1.19 ,p=0.018)と入室時NAD投与量(オッズ比1.32,95%CI1.01-1.73 ,p=0.04)が独立した予測因子であった。【結語】敗血症の心房細動治療において、全身臓器の障害程度やNAD初期使用量が難治性の予測因子となりうることが示唆された。