[P36-1] 急性下肢動脈閉塞に対する血行再建術中に持続血液透析を並列使用した一症例
【はじめに】急性の動脈閉塞に対して血行再建再後の再潅流障害は致死的合併症の一つで術中から予防的な対応が求められる。今回急性下肢動脈閉塞に対する血行再建術中に持続血液透析を並列使用した一症例を経験したので報告する。【症例】83歳女性。コントロール不良のネフローゼ症候群に対して入院の上,限外ろ過が導入された。入院中に右総腸骨動脈起始部から右大腿動脈にかけての急性動脈閉塞が生じ、左右大腿動脈バイパス術を行った。術中再灌流障害に備え,術前からの右内頚静脈の送脱血に加えて,術野では右大腿静脈から脱血し,2つの並列CHD(持続血液透析)を通じて右内頸静脈に送血を行った。またグルコースインスリン療法,塩化カルシウムの投与を平行して行い,結果として入室時,閉総時ともに著しい電解質異常は認めなかった。全ての血管遮断解除後も電解質異常を認めないことを確認し,右大腿静脈からの脱血を中止し,手術は終了した。【考察】急性四肢急性動脈閉塞症に合併するMNMS(筋腎代謝症候群)は予後不良の疾患である。本症例ではMNMSに対する予防方法として術中並列CHDの使用を行った。本症例は急激なカリウム濃度の変化が起こりえたため,血液浄化時間の延長では対応できない可能性があり,並列CHDを使用した。結果としてCHDの並列利用はカリウム値の変動,代謝性アシドーシスの発症を抑え,致死的不整脈回避など再灌流障害の予防に有効であった。【結語】急性下肢動脈閉塞に対する血行再建術中に持続血液透析を並列使用した一症例を経験した。