[P36-6] 治療抵抗性のTAFRO症候群にリツキシマブが著効した一例
【背景】TAFRO症候群は急性あるいは亜急性に血小板減少や全身性浮腫,発熱を来し,腎機能障害,臓器腫大などを伴う全身炎症性疾患である.今回,TAFRO症候群に対してリツキシマブを投与したところ全身状態の著明な改善を認めた症例を経験したので報告する.【症例】67歳女性.発熱,咳嗽,全身リンパ節腫脹,胸腹水貯留の精査で当院を受診し,リンパ節生検の結果TAFRO症候群の診断となった.第4病日にステロイドパルス,第6病日にトシリズマブ 600mg/週の投与を開始したが,腎機能低下と体液貯留および血管内脱水が進行し,体液コントロールに難渋したため第9病日ICUに入室した.トシリズマブの効果は乏しいと判断して第12病日にリツキシマブを500mg/週で投与開始した.血小板低下は遷延したが,炎症反応の低下および全身浮腫と腎機能は改善し,第19病日に一般病棟へ転棟した.しかしサイトメガロウイルス感染の増悪を認めたため,止むを得ずリツキシマブの投与を中断したところ,第28病日頃より腎機能低下や全身浮腫,体液貯留が再度出現した.第32病日にリツキシマブ再開したが,第35病日に胸水貯留と無気肺によるCO2ナルコーシスのため,意識障害と酸素化低下を来し,直ちに気管挿管を行いICUへ再入室となった.胸腹水のドレナージを行い,リツキシマブの治療効果で腎機能と全身浮腫の改善を認め,第44病日抜管し,第45病日に一般病棟へ転棟となった.【考察】TAFRO症候群は2010年に提唱された疾患概念であり,リンパ組織病理像はキャッスルマン病と類似するものの,臨床所見や経過は異なる点も多い.初期治療は高容量のステロイド治療や腎機能障害がない例ではシクロスポリンAを推奨されている.本症例のように治療抵抗性で急速に悪化する例では,機序は不明であるがトシリズマブやリツキシマブが有用であるという報告もある.本症例はリツキシマブに反応し症状改善を認めたが,休薬により急激に再燃し,投与再開によって再度症状の改善を認めた.本疾患は症例数も非常に少ないため,原因や治療方針に関してはさらなる研究が求められる.