[P38-1] 経心尖アプローチTAVR後心尖部仮性瘤を来した一例
緒言:経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)は周術期リスクが高く、外科的大動脈弁置換術(SAVR)の適応とならない、またはハイリスクな患者群に対してより低侵襲な治療として普及しつつある。導入当初、海外での30日死亡率は高く、最近では5%以下まで低下してきているも、ハイリスクの患者に施行する例が多く、合併症を来した際の短期死亡率は高い。今回、我々は経心尖アプローチ(TA)でのTAVR後に心尖部仮性瘤を来し、左室形成術施行後敗血症など治療に難渋した1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。症例:既往歴に腹部大動脈瘤、S状結腸癌、早期胃癌に対し手術歴があり、高血圧、慢性腎不全がある81歳女性。52年間40本/日の喫煙歴があり、左上下肢の筋力低下があり、介助を要するがある程度自立している。severe ASを認めており、大動脈弁置換術の適応だが、年齢、既往歴を考慮し、SAVRよりTAVRの方が最良と判断した。大腿動脈からのアプローチは困難であり、TAにてTAVR(SAPIEN XT 23mm)を施行。抜管し、ICU帰室したが手術当日に呼吸不全のため再挿管。術翌日抜管したが、術後3日目に無気肺、肺炎のため低酸素血症となり、再々挿管。代謝性アシドーシス、乏尿となりCHDFを開始した。術後8日目にCHDF離脱。術後14日目に血圧低下、尿量低下、代謝性アシドーシスを認め、心エコーで心尖部仮性瘤を認めた。術後15日目に人工血管パッチを用い、左室形成術を施行。再手術後8日目に熱発し、血液培養は陰性だったが、カテーテル培養からStenotrophomonas maltophiliaが検出され、CRBSIによるグラム陰性桿菌敗血症としてPMXを使用。相対的副腎不全としてソルコーテフ400mg/日も併用し、全身状態改善。経管栄養、中心静脈栄養も行ったが、低栄養による浮腫のため体重が最大+25kgとなった。再手術24日目に再度CRBSIから敗血症となり、カテーテル培養、血液培養からmaltophiliaが検出された。抗菌薬、カテーテル入替で全身状態改善。再手術後26日目に気管切開を行い、栄養状態も徐々に改善し、初回術後57日目、再手術後41日目にICU退室。現在は人工呼吸器を離脱し、経管栄養、リハビリを行っている。考察:心尖部仮性瘤はTAVR後の重篤な合併症として周知されており、自験例では再手術を行い救命できた。TAVRの対象となる患者は周術期リスクが高い患者が多く、自験例でも合併症、全身管理に難渋した。結語:TAVR後心尖部仮性瘤の一例を経験した。