第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

多臓器関連

[P41] 一般演題・ポスター41
多臓器関連

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場21 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:松本 美志也(山口大学医学部附属病院集中治療部)

[P41-1] 熱中症治療中に心室細動をきたし,DICが遷延したが集学的治療により救命し得た高齢者の1例

山田 貴大1, 吉澤 佐也2, 西田 圭佑2, 春田 祐子2, 黒田 幸恵2, 三輪 立夫1, 三浦 政直1 (1.刈谷豊田総合病院 救急集中治療部, 2.刈谷豊田総合病院 麻酔科)

【背景】地球温暖化の影響で高齢者の非労作性熱中症は増加傾向にあり,重症化しやすく致死的経過をとる症例も多い.今回,速やかな冷却処置にもかかわらず,重症熱中症治療中に心室細動を起こし,多臓器障害が遷延したが,集学的治療により神経学的後遺症なく救命し得た症例を経験したので報告する.【症例】85歳,女性.最高気温37.4℃の猛暑日に冷房が壊れた自宅内で意識がない状態を家人に発見され,当院ドクターカーにて搬送された.来院時膀胱温41.5℃,意識障害,呼吸循環不全を認め,III度熱中症と判断し,救急外来で気管挿管・人工呼吸器管理下に大量補液と冷却処置(胃冷却,冷却輸液及び体表冷却)を行った.初療開始から1時間後には,膀胱温は36℃台となった.血液検査上,線溶亢進型DIC,肝腎機能障害を合併し,熱中症重症度スコア6点,APACHE IIスコア42点,SOFAスコア15点であった.救命センター入室後は平温を維持し,血液浄化療法(PMMA-CHDF)を中心とした集中治療により入室6時間後には一旦ショックから離脱したが,入室9時間後に誘因なく心室細動となり,アミオダロン使用により除細動した.冠動脈造影にて優位狭窄は認めず,左室造影で心尖部肥大型心筋症(AHCM)の所見を認め,再発予防にアミオダロン持続投与を第5病日まで継続した.第2病日よりDICは線溶抑制型へと移行し,第3病日にショックから離脱した.第5病日の頭部MRIにて病的所見はなく,意識状態は第6病日より改善し始め(GCS11点),第12病日に呼吸器離脱,第14病日にDICを離脱した.第17病日に一般病棟へ転棟し,第39病日に自宅退院した.【考察と結語】熱中症の予後は異常高体温の持続時間に依存する.施設により施行可能な手法は異なるが,可及的速やかな深部体温正常化が予後を左右する.本例では病院前救護との連携によりERで迅速な冷却を開始でき,良好な転帰に寄与したと考えられた.多臓器障害の遷延にはDICの遷延が強く関与していると推定された.また,熱中症治療中に心室細動をきたした報告は少なく,本例ではAHCMを背景として,熱中症による可逆的な心筋障害により発生したと考えられた.文献的考察を加え報告する.