第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

多臓器関連

[P41] 一般演題・ポスター41
多臓器関連

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場21 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:松本 美志也(山口大学医学部附属病院集中治療部)

[P41-5] TAFRO症候群が疑われた1症例

黒田 祐子1, 柳田 国夫1, 武田 明子1, 大木 健太郎1, 室園 美智博2 (1.東京医科大学茨城医療センター, 2.東京医科大学茨城医療センター 麻酔科)

【背景】 TAFRO症候群は血小板減少、腔水症、発熱、腎機能障害、臓器腫大を呈する全身炎症性疾患で、2010年に初めて提唱された疾患である。全身状態が急速に増悪するため、早期診断・治療が必要となるが、まだ確立した治療法はない。本症例はTAFRO症候群の最重症型(grade5)である可能性が高く、今回報告する。【臨床経過】 症例は既往のない60代男性。発熱、胸痛、呼吸困難感を主訴に他院を受診し、右胸水を認め精査加療目的に入院した。1週間抗菌薬加療等で経過を見ていたが、徐々にBilの上昇、腎機能障害を認めたため、精査加療目的に当院に転院搬送となった。入院時採血検査上Bilの上昇、腎機能障害、血小板の低下、炎症反応高値を認め、身体所見上腹部全体の圧痛を認めた。画像所見上、単純CT検査にて胸腹水、胸腔内・腹腔内リンパ節の軽度腫大、腸間膜脂肪織濃度の軽度上昇を認めた。敗血症の疑いとして、各種培養採取後MEPM+DAPの投与、多臓器不全に対してCHDF、PE、DIC治療等を施行した。抗菌薬加療後も特に炎症反応の改善は認めず、採取した各種培養からは有意な菌は検出されず、ウイルス抗体も有意なものを認めなかった。膠原病、悪性腫瘍等の可能性を考慮し、各種マーカーを採取したが、SIL-2Rが1760 U/mlと軽度高値を認めるのみだった。Gaシンチグラフィで前縦隔リンパ節に軽度の集積を認めたものの、全身状態が悪く生検は困難であった。 本症例はTAFRO症候群診断基準 2015において、必須項目3項目と小項目2項目を満たし、臨床経過や症状からもTAFRO症候群の可能性が高く、その中でも最重症型(grade5)に分類される。抗菌薬加療に加え、ステロイド投与を開始し、ステロイド投与後より多臓器不全の改善を認めた。【結論】 最重症型のTAFRO症候群が疑われる一例を経験した。TAFRO症候群は診断基準、治療法の確立していない比較的新しい疾患である。本症例のように急性から亜急性で進行する原因不明の多臓器不全、特に腎機能障害と血小板低下を伴う症例は集中治療室では多く見かけられ、その際はTAFRO症候群を鑑別に挙げる必要がある。当ICUで初めての症例であり、他の鑑別診断や検査、治療方針に関して御教授いただければ幸いである。