第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

多臓器関連

[P41] 一般演題・ポスター41
多臓器関連

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場21 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:松本 美志也(山口大学医学部附属病院集中治療部)

[P41-6] 消化管穿孔を契機に受診に至った甲状腺クリーゼの1例

全田 吏栄, 上野 智史, 三澤 友誉, 佐藤 ルブナ, 反町 光太朗, 鈴木 剛, 大野 雄康, 塚田 泰彦, 小野寺 誠, 伊関 憲 (福島県立医科大学付属病院 高度救急救命センター)

【背景】甲状腺クリーゼはさまざまな合併症を呈し、時に集学的治療を要する致死率の高い疾患である。
【臨床経過】41歳、男性。既往歴に特記事項なし。受診2ヶ月前より疲労感を自覚し、受診1ヶ月前よりほぼ寝たきり状態となっていた。この間、家族に医療機関の受診を勧められていたが拒否していた。X年6月、腹痛が出現し救急搬送された。来院時不穏状態で、血圧 160/130 mmHg、心拍数 220 /分、体温 38℃であった。身体所見で甲状腺の著明な腫大を認め、CT検査で甲状腺の腫大と腹腔内遊離ガス像を認めたことから、甲状腺クリーゼ、消化管穿孔と診断し、気管挿管後、入院となった。甲状腺クリーゼに対して、チアマゾール 60 mg/日、ヨウ素カリウム、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム 400mg/日を開始した。第2病日に到着した血液検査の結果はTSH <5×10-9 IU/mL、FT4 7.60 ng/dL、FT3 19.76 pg/mLであった。消化管穿孔に関して外科医と相談し、全身状態が極めて不安定であったことから耐術困難と判断し、PPIおよび抗生剤投与による保存的加療の方針となった。入院後、血圧が低下し、血液培養でグラム陽性球菌が陽性、またSOFA score 14点であり、敗血症性ショックおよび多臓器不全、DICを併発していると判断し、抗菌薬、昇圧剤、AT-III製剤およびトロンボモジュリンの投与、CHDF+PMX-DHPを開始した。しかし、肝不全が増悪傾向を示したほか、第8病日には頻脈および血圧低下を認めた。貯留した腹水を穿刺したところCandida様の菌体を認めたため、真菌性腹膜炎の併発を考え、ミカファンギンナトリウムの投与を開始したが、全身状態がさらに悪化し、第16病日に死亡した。
【結論】未治療のBasedow病が存在し、消化管穿孔の発症を契機に受診に至った甲状腺クリーゼの1例を経験した。甲状腺クリーゼの治療には、全身管理や臓器障害への対応の他、感染症に対する治療も必要である。本症例ではいずれも重症であり、双方の治療のバランスを保つことが難しく、示唆に富む症例であった。