[P50-1] 肺炎患者の喀痰アデノシン三リン酸値とMiller&Jones分類および喀痰培養の関連性の検討
【背景】アデノシン三リン酸(ATP)拭き取り検査は,汚染量を微生物のATP総量として捉える測定方である.簡便迅速に清浄度調査が可能で,食品製造会社の環境整備に用いられている.われわれは「喀痰のアデノシン三リン酸値とMiller&Jones分類(M&J)およびグラム染色の関連性の検討」を第45回日本集中治療医学会学術集会で発表し,喀痰のATP測定の有用性を報告した.しかし,肺炎患者の喀痰との関連性は明らかではなかった.【目的】 肺炎患者の痰の清浄度評価に,ATP値測定とM&J,および喀痰培養との関連性を検討した.当院倫理委員会の承認を得た.開示すべきCOIはない.【対象】肺炎患者11人(検体数11).【方法】観察研究.ATP測定はルシパックPen(キッコーマンバイオケミファ株式会社,東京)で吸引カテーテルを拭き取り,ルミテスターPD-20(同)で測定した.ATP値(AV):100RLU以上が,清浄度が低いとされる.また痰をM&Jで評価し喀痰培養を行った.AVをM&J分類別(M1,M2,P1,P2,P3),および喀痰培養を比較した.さらにPaO2/FIO2比(P/F)とAVを比較した.【結果】M1(検体数:1),AV:644RLUで,グラム陽性球菌(GPC)と白血球(WBC)を確認した.P/F比:212であった.M2(検体数:4),AV:平均60776で,全ての検体からGPCとWBCを確認した.AV:108046の検体はグラム陰性桿菌(GNR), AV:28850の検体はGNRとグラム陽性桿菌(GPR))をそれぞれ確認した.AV:14157の検体のP/F比は230であった.P1(検体数:4),AV:平均148340で,AV:1766の検体は,GNRを検出し,P/F比は171であった. AV:549335の検体は,GNR,GPC,GPR,真菌,WBCが,AV:28465の検体は,GPC,真菌,WBCが,AV:13795の検体は,GNRとWBCが検出されP/F比は350であった.P2(検体数:2),AV:平均360369で,全ての検体からGPCが確認された.AV: 390441の検体からはGNRも確認した.P3はなかった.【結論】全ての検体から細菌が検出された.M&Jで膿性痰が多くなるほどAV平均が高値を示し清浄度が低かった.また喀痰培養による菌種とAVの関連性はなかった.しかし,AV:13000以上の場合はWBC(3+)の検体が多かった.また,AVとP/F比の関連性は無かった.以上より,AVが1000RLUを超える場合は痰の1/3~2/3が膿性を含んでいる.ATP値の測定は客観的な肺炎患者の痰の評価ができる可能性がある.また,喀痰に含まれるWBCの数量を示す指標として有用かもしれない.