[P54-2] 消化器外科手術後の意識障害におよぼすICU短期入室の影響
【背景】ICU退室後の譫妄やPost Intensive Care Syndromeは,比較的長期間の入室後の問題である.短期入室後に一般病棟(GW)でドレーンや点滴の自己抜去といった一過性意識障害による異常行動(AB)となった患者が存在する.数日間の短期入室が,精神状態に与える影響は明らかではない.この原因を調査しリスク因子を明らかにしたい.【目的】術後にGWに直接帰った患者と,ICUへ数日間入室した患者の背景を比較し,AB発生の差を検討した.本研究は当院倫理委員会の承認を得た.開示すべきCOIはない.【方法】後方視的に観察研究を行った.対象:2017年4月1日~2017年7月31日で,消化器外科術後患者147人のA.患者背景(性別,年齢,BMI,入院歴),B.既往歴(精神疾患,認知症,脳卒中),C.手術内容(手術時間,出血量),D.ICU経過(入室期間,鎮静,人工呼吸器管理の有無,輸液ルート数,ドレーン数),E.その他(術後合併症,入院期間,転帰)を調べた.ICU入室患者(I群)とGW直帰患者(G群)をABの「有り」と「無し」に分け,それぞれ上記A~Eを比較した. また,群内でAB患者の背景を比較した.統計学的検討は,フィッシャー検定を使用した.【結果】I群:111人で,GWでAB発症:6人(男性:3人,女性:3人)で,G群:37人で,AB発症:2人(男性:2人)だった.I群で帰宅願望と徘徊4人,点滴抜去3人,ドレーン抜去2人,オムツ外し2人,G群で点滴抜去2人,オムツ外し1人,徘徊1人であった.I群でAB患者は,入室2日未満:4人で入室2日以上:2人だった.年齢は,I群では 70歳未満(AB発症):58人(0人)で,70歳以上:53(6)で有意に発症した.G群では80歳未満:31(0),80歳以上:6(2)で有意に発症した.出血量はI群で200ml未満(AB発症):74人(0人),200ml以上:37(6)で有意に発症した.G群で200ml未満(AB発症):34(2),200ml以上:1(0)で有意差はなかった.既往歴は,I群の既往歴有り(AB発症):21人(4人),既往歴なし(AB発症):90(2)で有意となった.G群で既往歴あり(AB発症):5(1),既往歴なし(AB発症):32(1)で有意差はなかった.その他調査項目に有意差はなかった.【結論】I群では70歳以上または出血量200ml以上でABが有意に発症した.また,精神疾患,認知症,脳卒中の既往がある場合も有意にABを発症した.以上の条件を満たす場合,短期間のICU入室でもGWにおいてAB発症の原因となることが示唆された.