[P56-1] せん妄患者における自律神経機能評価の試み
背景:せん妄は、近年、急性脳機能障害と呼ばれ臓器不全症候群の一つとも位置づけられ、入院期間や死亡率との関わりも指摘されている重要な症候である一方、客観的な診断や程度の評価には課題を残す。我々は通常のバイタルモニタリング以上の侵襲なく計測が可能な心拍変動(HRV:heart rate variability)に注目して来たが、今回せん妄との関係についても検討を行った。対象:2016年7月から2017年3月までに高度救命救急センターに入院し、ICDSCにて4点以上及び精神科医にてせん妄と診断された5名(内訳:平均年齢72歳、性別:男性3名・女性2名 全員非挿管患者)。方法:経過中、ベッドサイドモニターから収集した心電図をHRV/自律神経系活性解析ツール フラクレットWTを用いて周波数解析を行なった。結果:対象者すべてにおいて、全般的に自律神経の日内変動を認めず、副交感神経が低く変化が少ない傾向を示し、相対的に交感神経は高目に推移していた。考察:せん妄時にはサーカディアンリズムが乱れ、また治療としての自律神経刺激など、せん妄の発症への自律神経系の関与は以前より想定されていた。今回、限られた症例数ながらこのせん妄の経過に合わせHRVが変化し、自律神経活性とくに副交感神経の活動度と相関する傾向を示していたことは興味深く、今後さらに検討を進め、心電図をもとにHRVをリアルタイム+経時的にモニタリングする事で、せん妄の予測や評価が容易になり、治療や看護の一助となることを目指したい。