第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

栄養

[P57] 一般演題・ポスター57
栄養

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:東別府 直紀(神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科・NST)

[P57-2] 重症患者の経腸栄養管理における腸管機能維持プロトコール導入の有効性の検討

上原 頌子, 小林 瑞枝, 山崎 敦子, 小暮 圭佑, 木村 彩乃, 金本 匡史 (群馬大学医学部附属病院 集中治療部)

【背景】重症患者は消化器合併症の発生リスクが高く、経腸栄養を確立する上での妨げとなり得るため排便コントロールの必要性は高い。しかし、A病院集中治療部では看護師個々の裁量によって排便状況に対する介入が異なり、統一した介入がされにくいことが課題であった。そこで、「腸管機能維持プロトコール」(以下、プロトコール)を作成し、2018年4月より導入している。【目的】プロトコール導入前後で排便状況や消化器合併症の発生率を比較し、プロトコール導入が排便コントロールに有効であったかを検討する。【方法】A病院集中治療室に入室し経腸栄養剤を投与していた患者(プロトコール導入前後各25例)を対象とし、患者背景、経腸栄養剤投与状況、栄養状態、排便状況、消化器系薬剤の使用、消化器合併症の発生状況などについて後方視的にデータを収集した。プロトコール導入前後で、単純集計と、比較可能な項目はエクセル統計を用いたt検定を行った。本研究の実施にあたっては、所属施設の「人を対象とする医学系研究倫理審査委員会」の承認を得た。【結果】患者背景や排便量などの項目で有意差はみられなかったが、「便秘発生平均日数」「下痢発生平均日数」は、平均値を比較すると減少傾向であった。また、嘔吐発生率はプロトコール導入前後とも8%と変化はなかったが、便秘発生率は80%から56%に減少し、下痢発生率は24%から16%に減少した。嘔吐や下痢により栄養剤投与量を減量した患者の割合は、24%から16%に減少した。目標投与カロリー達成割合は、52%から56%に微増、経腸栄養投与開始後の最大投与カロリー到達までの平均日数は4.0日から3.5日に短縮した。【結論】t検定を実施した項目で有意差は出なかったことから、プロトコール導入が統計学的に有効であったとは言えない。しかし、便秘・下痢の発生割合は減少傾向であり、本プロトコール導入は有害ではなかったと考えられる。症例数の増加や調査期間の延長によって有効なデータが得られる可能性はあり、今後の課題である。今回はプロトコール導入前後で量的な評価を行ったが、今後はスタッフの意見も取り入れてプロトコールの内容を検討し、運用を継続していきたい。