第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

栄養

[P57] 一般演題・ポスター57
栄養

Sat. Mar 2, 2019 11:00 AM - 12:00 PM ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:東別府 直紀(神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科・NST)

[P57-5] ICUにおける栄養療法の実態

関戸 沙予1, 江口 秀子2, 内藤 綾1 (1.済生会千里病院 看護部 ICU, 2.大阪青山大学 健康科学部 看護学科)

【背景】日本版重症患者の栄養療法ガイドラインでは、経腸栄養開始について遅くとも48時間以内に開始することが推奨されている。しかし、不安定な循環動態や、消化管術後など早期経腸栄養が開始しにくい症例も存在する。静脈栄養に関する至適開始時期に明確な規定はなく、A病院でも臨床判断に基づき、患者の有益性を考慮し決定している。栄養療法の重要性についての認識は看護師間で差があり、効果の実感には時間を要する。特に重症患者は循環動態や呼吸状態などの生命に直結する生体反応と比べて着目度が低い傾向にある。そのため、この調査よってICU入室患者の栄養状態に関する看護師の意図的な観察や看護介入の促進に繋げたい。【目的】 早期(48時間以内)経腸栄養、経口摂取が開始できないICU入室患者の特徴と栄養療法の実態を明らかにする。【方法】 研究デザインは症例対照研究。平成28年2月以降病院ICUに入院した患者のうち、48時間以内に経腸栄養、経口摂取を開始した患者50件(以下、開始群)と開始していない患者50件(以下、未開始群)で比較検討(Fisherの正確確率検定)を行った。なお、48時間以内に死亡、退院や転院した患者、医師にて救命困難と判断された患者は除外した。【結果】 患者背景は2群間で有意差はなかった(性別、挿管の有無、年齢、入院時BMI、入院時の褥瘡の有無)。主疾患10疾患のうち、消化管疾患が多く(P<0.001)、昇圧剤の使用率にも有意差を認めた(P=0.048)。栄養開始時から必要摂取カロリー到達までの時間は中央値で開始群2537分、未開始群は6120分であった(カロリー到達前の退院・転院は除く)。未開始群において、ICU滞在時の下痢の発生(P=0.031)、皮膚トラブルの発生(P<0.001)が多く認められた。また、高カロリー製剤の併用は12%、脂肪製剤の投与は16%であった。【結論】ICU入室後48時間以内に経口摂取または経腸栄養が開始できない患者の多くは、消化管疾患患者であった。また、昇圧剤の使用率が高く、必要摂取カロリー到達までに長時間を要しており、その要因として高カロリー製剤の併用率および脂肪製剤の投与率の影響、下痢の発生率が高いことが、経腸栄養の開始または開始後の増量を妨げる一因となっていた。さらに、表皮剥離をはじめとした皮膚トラブル発生率が高い。必要摂取カロリー量の把握、静脈栄養の併用、下痢に対する介入、皮膚トラブルに対する予防的ケア介入が重要である。