第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

中毒

[P61] 一般演題・ポスター61
中毒01

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:40 ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:小畑 仁司(公益財団法人大阪府三島救急医療センター)

[P61-2] 心筋梗塞の治療中に合併したが救命しえたアセリオによる中毒性表皮壊死症

玉井 謙次1, 進藤 俊介1, 木村 慎一1, 金井 理一郎1, 佐久間 絢1,2, 高橋 宏行1 (1.社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院, 2.東邦大学医療センター大森病院麻酔科)

【背景】アセトアミノフェン注射剤(アセリオ)は,集中治療領域で使用頻度が増えているが,内服薬は中毒性表皮壊死症(TEN)の頻度が高いと報告されている.しかし,アセリオでのTENは国内の報告例が少なく、重症患者の治療中にTENを合併した症例経過の報告例も少ない.我々は心筋梗塞(MI)の管理中に解熱鎮痛に使用したアセリオでTENを合併し,治療に難渋したが社会復帰した症例を経験したので報告する.
【経過】65歳 男性 既往歴 糖尿病 高血圧症
 心停止で発見され,当院に救急搬送された.MI(#1-2=75%, #3=90%,#7=75%, #13-15=100%)と診断し,経皮的心肺補助装置(PCPS)を導入した.#13-15に対して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行し,残りは回復後に行う予定とした.入院7日目にPCPS,入院14日目に人工呼吸器を離脱した.
 入院20日目,発熱・頻脈からカテーテル感染を疑い抗菌薬とアセリオを1g投与した.入院22日目に頸部から体幹部の皮疹出現し,薬疹を疑った.長期投与薬剤のうちアスピリン・プラスグレル以外は中止・変更した.アセリオは単回使用で,被疑薬とせず数回使用した.
 中毒疹の診断でプレドニゾロン(PSL)30mgの投与を行ったが皮疹は悪化し,疼痛による呼吸促迫・後負荷増大で心不全管理に難渋したため人工呼吸・深鎮静とした.TENと診断,過去使用した薬剤は全て中止し,ステロイドパルスを3日間施行した.皮膚症状は改善し,後療法はPSL70mgから,10mg/週ずつ減量した.薬剤リンパ球刺激試験でアセリオが陽性だった.入院42日目に大腸菌・カンジダ菌血症を合併したが軽快し,残存病変へのPCI,気管切開を施行し,入院74日目にICUを退室した.入院109日にリハビリ病院に転院,入院186日に自宅退院し,職場復帰した.
【結論】アセトアミノフェンは原因薬剤となる事が多く,アセリオも注意が必要である.薬疹出現時,非ステロイド系鎮痛抗炎症薬は使用しないことが望ましい.我々は当初,長期投与していた鎮静薬・抗血小板薬等が疑わしいと考え,単回投与のアセリオは疑わなかった.ステロイドパルス後,皮膚症状は改善したが,上皮化までは表皮剥離に対する疼痛制御と浸出液増加による体液管理が困難で容易に心不全を来した.また鎮静薬の選択も限られ,ミダゾラムでの長期鎮静とステロイド使用が廃用を悪化させ,人工呼吸器離脱,リハビリが長期化したが社会復帰まで回復させることが出来た.