第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

中毒

[P62] 一般演題・ポスター62
中毒02

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:40 ポスター会場21 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:藤塚 健次(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科救急科)

[P62-1] 一酸化炭素中毒にメトヘモグロビン血症を合併した一例

高橋 裕明, 井上 一由, 越智 香織, 熊代 美香, 大岩 雅彦, 大西 淳司, 谷津 祐市, 平崎 盟人 (香川県立中央病院麻酔科)

救急外来において火事、排気ガス吸入、練炭自殺等様々な要因による一酸化炭素中毒(CO中毒)を診ることは稀ではないが、CO中毒にメトヘモグロビン血症を合併することはあまり知られていない。今回我々はCO中毒にメトヘモグロビン血症を合併した症例を経験したので報告する。症例は71歳、男性。心筋梗塞の既往があり経皮的冠動脈形成術の治療歴があった。駐車場で自動車の排気ガスを車内に引き入れ、意識障害を呈しているところを発見され当院救急外来へ搬送された。来院時JCS200、GCS: E2V1M5、SpO2 60-70%台、BP91/40mmHg、HR125回/分、呼吸数26回/分、体幹、四肢の鮮紅色はほとんど認めず、特に四肢はチアノーゼを呈していた。直ちに気管挿管を行い、100%酸素投与下での血液ガス分析では、SpO2 98.3%、O2Hb 50.1%、COHb 38.3%、MetHb 10.7%、乳酸157mg/dLであった。100%酸素下に人工呼吸管理を継続し、徐々にCOHb、MetHbは低下し、10時間後にはCOHb 0.9%、MetHb0.9%と正常範囲まで改善を認めた。翌日には意識レベルは改善し、抜管、第3病日にはICUを退室した。第7病日を過ぎた頃より、徐々に高次機能障害、歩行障害、姿勢反射障害等の神経症状の悪化を認め、頭部MRI, CTでも両側淡蒼球、深部白質に病変が認められCO中毒による遅発性脳症が認められた。第17病日に高圧酸素療法目的に近医転院となった。当院における過去8年間のCO中毒で入院となった13例においてメトヘモグロビン濃度上昇を認めた症例は本症例のみであった。メトヘモグロビン血症に関与する薬物は数多く報告されているが、本症例では薬物摂取は行っておらず、排気ガス中の窒素酸化物がメトヘモグロビン血症を引き起こしたと考えられた。メトヘモグロビン血症の治療としては原因物質が判明している際はその原因物質の除去が第一選択だが、メトヘモグロビンの濃度が20-30%以上となり意識障害など臨床症状を呈している際にはメチレンブルーの静脈内投与を追加することが推奨されている。本症例ではメチレンブルーの投与は行われなかったが、排気ガス吸入による意識障害ではCO中毒にメトヘモグロビン血症を合併している場合があり、メトヘモグロビンが高値の場合はCO中毒の治療にメトヘモグロビンの治療を加える必要があると考える。