[P62-5] 心肺停止となった急性カフェイン中毒に対してECPR、High flow CHDを導入し救命し得た1症例の経験
【背景】近年カフェイン過剰摂取による救急搬送数が増加傾向にあり、2017年の日本中毒学会の調査によると、2011年からの5年間に101人が搬送され、そのうち3人が死亡と報告されている。今回当院で一般市販薬のカフェイン錠を大量内服し、CPAに至った急性カフェイン中毒症例に対してECPR、High flow CHDを導入し、生存退院した1症例を経験したので報告する。【症例】成人女性。既往にうつ病があり精神科に通院中であった。【臨床経過】自殺企図目的に市販薬の睡眠防止薬(カフェイン量7g)を内服し当院救命センターに搬送となった。救急隊到着後心室細動(VF)となったためCPR開始し、約6分後に心拍再開した。病院到着時意識レベルJCS 3-300、心拍数145回/分、血圧109/81mmHg、CTR延長、血液ガス分析上高乳酸血症および著明な代謝性アシドーシス、低カリウム血症を認めた。その後再度VFとなったため、病歴・臨床症状よりカフェイン中毒による致死性不整脈と判断し、V-A ECMOによるECPR導入となった。推定心停止時間は27分であった。V-A ECMO確立後、脳低体温療法導入しICU入室となった。ICU入室後低カリウム血症の補正および胃管より活性炭投与を行い、また、血中カフェイン除去目的にHigh flow CHDを導入した。施行条件は血液浄化器AEF-10(旭化成メディカル社製)、血液流量100ml/min、透析液流量2000ml/h(50ml/kg/h)とした。第3病日に心機能改善、循環動態安定したためV-A ECMOおよびHigh flow CHD離脱、第62病日目に軽快退院となった。後日判明した血中カフェイン濃度は入院時202.2μg/mlからHigh flow CHD導入6時間後に118.3μgまで低下していた。【考察・結論】当院では24時間臨床工学技士(CE)が救命センター内に常駐しており、必要に応じて可能な限り初期診療からCEが介入することを心掛けている。本症例においてもCEがホットラインの情報から病院到着前にV-A ECMOの導入準備を行ったことで迅速なECPRの導入が可能となり、神経学的に良好な結果を得ることができた。血液浄化療法においても集中治療医と施行条件についてdiscussionし、CEの専門性を活かすことで適切で安全な導入・管理が可能であった。急性薬物中毒の治療において、本症例のように血液浄化療法や補助循環を要する症例も少なからず存在するため、医師や薬剤師とともにCEが初期診療からチームに介入し、治療方針を共有することが重要であると考えられた。