[P63-4] 【優秀演題(ポスター発表)】集中治療室常駐薬剤師の薬物治療レビューが入室患者の基礎疾患に対する薬物治療継続に及ぼす影響
【目的】近年、集中治療室(以下ICUとする)における薬剤師の常駐化が進み、弘前大学医学部附属病院(以下当院とする)でも常駐薬剤師が薬物治療の適正化に関する薬学的管理(薬物治療レビュー、以下レビューとする)を行っている。本レビューにおいては、入室前に行われていた薬物治療、食物・薬物アレルギー、薬物相互作用、臓器障害に伴う推奨薬物投与量、ICU入室理由となった疾患治療に伴う薬物治療の留意点等を記載している。集中治療領域における薬物療法適正化において、入室前に行われていた薬物治療を最適な時期に再開させることは、途切れのない基礎疾患の治療を継続する上で特に重要となる。本研究では、ICU常駐薬剤師によるレビューの有無別に、入室患者の基礎疾患に対する薬物治療継続状況について調査した。【方法】本研究は弘前大学大学院医学研究科倫理委員会の承認を受け実施された。当院において2017/1/1~2018/7/31にICUに入室した患者を調査対象とした。全患者の内、ICU入室前に行われていた基礎疾患に対する薬物治療を入室後にも継続する必要があった患者を抽出し、ICU常駐薬剤師によるレビューの有無別に2 群に振り分けた。ICU入室後、3 日以内に薬物治療が再開された患者を継続群に組み入れた。主要評価項目をICU入室前に行われていた薬物治療の継続率とし、調査項目を、年齢、重症度とした。さらにレビューに基づき、薬効分類別にICU入室後に継続した薬物治療の割合を求めた。両群間における患者背景およびレビューの影響の差異については、ピアソンのカイ二乗検定およびt検定を用いて統計学的有意差を検出した。【結果】両群間で年齢、重症度に有意差は認められなかった。基礎疾患に対する薬物治療の継続が必要と判断された患者が服用していた薬物の薬効別割合は、内分泌治療薬が最も高く(28.3 %)、次いで抗精神病薬(13.1 %)、点眼・外用薬(10.6 %)と続いた。レビュー有群でICU入室後に薬物治療が継続された患者は401 名(55.3 %)、一方、レビュー無群では30名(36.1 %)だった(P = 0.001)。【考察】ICU常駐薬剤師がレビューを実施すると、実施されなかった場合と比較し、入室前に行われていた基礎疾患に対する薬物治療の継続率が有意に上昇することが明らかとなった。ICU入室患者に対する常駐薬剤師のレビューは、集中治療領域における薬物療法適正化に寄与する極めて有用な手段の一つであることが示唆された。