[P67-1] 体外式膜型人工肺管理下に体位療法を施行した症例
【背景】体外式膜型人工肺(以下ECMO)施行中の患者の体位は可能な限り可動性のある正常な体位を保つべきとされている。現在、ECMO症例に対して体位療法を施行した報告が散見され、積極的な体位療法がX線画像の改善に寄与したり、腹臥位の実施が無気肺を予防するとの報告もある。しかし、体位療法の施行基準はいまだ不明確である。今回ECMO症例の体位療法を経験し、より適切な開始時期について検討した。【臨床経過】症例は50代男性。急性大動脈解離(StanfordA型)により救急搬送となった。同日上行大動脈置換術、部分弓部置換術を施行するも、循環動態が不安定でありV-A ECMO(右大腿動静脈カニュレーション)導入となった。 ECMO導入後より心収縮の改善を認め、平均血圧・心拍数はECMO導入3日目までに安定し、乳酸値は1.5mmol/Lまで低下した。同時期に酸素化も良値を示していた。吸引される痰はECMO導入4日目までは血性痰であったが、ECMO導入5日目より暗赤色血痰へと変化した。ECMO導入5日目に関節可動域訓練から理学療法は開始された。同日CTで両側背側に無気肺を認めた。ECMO導入10日目の気管支鏡で活動性の出血を認めず、痰や凝血塊の除去を目的として体位療法を施行する方針となった。肺音の左右差とカニューレの観察及び保護が必要との判断から左完全側臥位を行った。体位療法施行後、多量の暗赤色血痰が排出され、右肺背側の呼吸音の改善とともに呼吸状態も改善した。ECMO導入11日目に離脱となった。【結論】 ECMO症例に対する体位療法では出血性合併症、カニューレの逸脱、ECMO流量の低下に伴う循環動態の不安定化などに注意が必要である。 本症例は低心機能が遷延する中でもECMO管理下に循環動態の安定していた。肺内の出血傾向はECMO導入5日目から軽快傾向を認めていたことから、理学療法開始日に体位療法を開始できた可能性がある。体位療法の機会を増やすことで、無気肺の予防または早期改善を促し、合併症の軽減や治療期間の短縮に繋げられた可能性が考えられた。より効果が期待できる時期を逃さずに介入を開始できるように、ECMO管理下での理学療法開始基準を明確にする必要がある。