[P67-6] 抑うつの改善により人工呼吸器から離脱可能となった重度低肺機能患者の一例
【背景】低肺機能患者は呼吸苦や易疲労に伴い抑うつ傾向となり,リハビリや人工呼吸器離脱に難渋することがある.今回,非言語的コミュニケーションを基にリハビリ介入を行い抑うつ症状の改善に伴って人工呼吸器離脱が可能となった低肺機能の一例を経験したので報告する.【症例】肺癌・右下葉切除術後の60代男性.左自然気胸の診断で入院,胸腔鏡下肺切除術後に呼吸不全を来しICUにて人工呼吸管理,術後28日目に離脱困難として気管切開された.リハビリはICU入室と同時に介入したが,呼吸補助筋による胸式呼吸と呼吸苦を認め受動的な介入に限定される状況であった.リハビリ介入初期は無反応又は拒否的であり,意欲の評価であるvitality index(以下VI)は1点であった.信頼関係の形成とリハビリ意欲の向上が重要と考え,本人や家族より趣味や日課,学生時代の活動など過去の経験を聴取し,介入方法の工夫を図ると共に,看護師や家族にも過去を想起できるようなコミュニケーションを促した.リハビリ介入の具体例としては,学生時代に運動部で使用した経験のあるセラバンドやボールを用い筋力増強訓練を行った.このような介入を継続することで,「車椅子で病棟内散歩」や「歩行」といったhopeが本人より示されるようになり,hopeを達成できた際は,表情豊かに「今とても気分がいい.休みの日のリハビリは何をしたらいいか.」などの積極的な発言が聞かれるようになった.一方ご家族からは「なにもしてあげられなくて悔しい」との発言がありリハビリ時の同席を勧めると共に,心身機能の変化について話し合うこととした.歩行訓練の際は「歩いている姿がまた見ることができるなんて」と感涙した様子であり,ご本人の意欲向上の一助となった.これらの介入により術後95日目には人工呼吸器を離脱,最終評価時VIは6点と向上した.【考察】介入当初の消極性や拒否は呼吸苦に伴う精神的不安や人工呼吸による身体侵襲,環境要因などが原因と考えた.それに対し家族を含めた多職種連携のもと非言語的コミュニケーションを重視し,本人が過去を想起できるようなリハビリ介入を工夫することにより抑うつ症状を改善でき,運動療法のステップアップが可能となったことで人工呼吸器離脱まで至ったものと思われた.【結語】抑うつ傾向にある重度低肺機能患者において,抑うつ症状を改善する理学療法介入の工夫は意欲を改善し,人工呼吸器離脱につながった.