第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P69] 一般演題・ポスター69
呼吸 症例04

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:00 ポスター会場7 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:横瀬 真志(横浜市立大学附属病院 集中治療部)

[P69-1] Mendelson症候群により急性呼吸促迫症候群を呈し、VV-ECMOの導入により救命し得た1例

中村 龍太郎, 加藤 万由子, 畠山 稔弘, 上原 克樹, 鈴木 達彦, 五明 佐也香, 上笹貫 俊郎, 鈴木 光洋, 杉木 大輔, 松島 久雄 (獨協医科大学埼玉医療センター 救急医療科)

【背景】Mendelson症候群とは胃内容物を誤嚥し,胃酸によって化学性肺炎を起こした病態のことであり,吐物の誤嚥後に急性発症する.胃酸による肺障害によって,ときに重症化し,急性期には低酸素血症を起こし,慢性期には肺組織の繊維化により間質性変化をきたす.今回,急性薬物中毒による胃内容物の誤嚥を契機にMendelson症候群を発症し,急性呼吸促迫症候群(ARDS)を合併した症例に対し,VV-ECMOを使用し救命した症例を経験したのでここに報告する.【臨床経過】症例は33歳男性,薬物過量内服による急性薬物中毒の診断で近隣のA総合病院へ入院した.入院時,低酸素血症は軽度であったが,徐々に呼吸状態が増悪,第3病日に胸部X線にて両側肺野のびまん性浸潤影,著明な低酸素血症(P/F ratio108)を認め人工呼吸器管理となった.第4病日,呼吸状態の改善を認めないため当院へ転院搬送,来院時すでにARDSの所見を呈しており,前医から行われていた抗菌薬投与(Sulbactam / Ampicillin)および全身管理を継続した.しかしながら,呼吸状態の改善は乏しく,第8病日にはP/F ratio 89, Murray score 3.3と増悪を認めたため,抗菌薬をMeropenem,Azithromycinへ変更し,VV-ECMO導入となった.この際,人工呼吸器の設定はRest Lung設定とした.第9病日からステロイドハーフパルス療法を3日間施行した.徐々に呼吸状態は改善し,第12病日にVV-ECMOを離脱,第15病日には人工呼吸器を離脱し抜管となった.抜管後はHigh flow nasal cannulaによる高流量酸素療法を開始し,徐々に吸入酸素濃度を漸減,第17病日には低流量酸素3L/minで呼吸状態は安定した.第18病日,A総合病院へ転院となった.半年後に撮影された胸部CT検査においては軽度の気腫性変化を認めており,肺組織障害に伴う慢性期病変が残存していた.【結論】本症例は入院中の喀痰培養検査において有意な菌の発育を認めず,抗菌薬治療に奏功しなかったこと,症状経過が激烈であったことから,Mendelson症候群によるARDSと考えられた.Mendelson症候群は一般的な誤嚥性肺炎と比較し高率にARDSを合併するため,本症例のようにVV-ECMOを導入しなければ救命できないことがある.そのためECMO管理を始めとする集中治療のできる施設への早期転送を含めた介入が転帰の改善につながると考えられた.