第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P69] 一般演題・ポスター69
呼吸 症例04

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:00 ポスター会場7 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:横瀬 真志(横浜市立大学附属病院 集中治療部)

[P69-6] 5-fluorouracilによる化学療法中、高アンモニア血症、意識障害を来した一例

望月 俊明1, 山本 豊1, 横田 美幸2 (1.がん研究会有明病院, 2.がん研究会有明病院 麻酔科)

【はじめに】 5-FUを含むレジメンの化学療法中においては、稀ではあるが、重度の高アンモニア血症を来すことが報告されている。今回我々は術後再発膵癌に対して、化学療法中に意識障害を呈し搬送され、高アンモニア血症と診断、ICU加療を行った症例を経験したため報告する。【症例】 食道表在癌、肺癌、前立腺癌、陰茎癌、悪性リンパ腫の既往ある76歳、男性。受診の1年前より膵体尾部癌術後残膵再発に対して、modified FOLFIRINOXのレジメンによる化学療法が開始されていた。受診9日前に17コース目の投与が行われ、薬剤の投与量は、5-FUが2400mg/m2で、エルプラット85 mg/m2で48時間持続投与とし問題なく投与終了となっていた。受診当日、朝から呼びかけに対する反応鈍いことを家族が発見し、当院救急車にて搬送となった。来院時意識はGCS E4V1M2の7点で自発開眼あるも従命とれない状況であったがその他バイタルサインに異常は認めなかった。舌根沈下あり、むせ込みも強く、失調性の呼吸を認めた。頭部CTでは、明らかな頭蓋内占拠性病変なく、血液検査上、血糖、電解質異常などなく、アンモニアが389μg/dLと高値を認めた。腎機能は投与前、来院時ともに、正常であり高アンモニア血症による意識障害と考え、気道確保目的に挿管行い、ICU入室とし、ラクツロース注腸投与、分岐鎖アミノ酸の投与を行った。第2病日、アンモニア194μg/dLと高値も、意識覚醒したため抜管とし、呼吸器を離脱した。第3病日ICU退室、第4病日にはアンモニア値も正常化し、第9病日独歩退院となった。【考察】5-FUによる高アンモニア血症の機序として、その代謝産物であるFluoroacetateがクエン酸回路を障害する機序が報告されており、腎障害の悪化なども重篤化の因子となりうることが報告されている。今回の症例に関しては、経口摂取不良による脱水、便秘に、5-FUの投与が加わったことにより高アンモニア血症が助長されたと考えられた。【結語】 がん治療医だけでなく、集中治療医もこれら化学療法による副作用を念頭におき、がん治療医と速やかな情報共有を行い集学的治療を行っていくことが重要と考えられた。