第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P71] 一般演題・ポスター71
呼吸 症例06

Sat. Mar 2, 2019 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場9 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:京極 都(大阪母子医療センター 集中治療科)

[P71-5] 経口内視鏡的筋層切除術後に気胸を発症しICU管理を要した一例

地主 継1, 竹川 大貴1, 斎藤 淳一1, 橋場 英二3, 廣田 和美2 (1.弘前大学医学部附属病院, 2.弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座, 3.弘前大学医学部附属病院集中治療部)

【緒言】経口内視鏡的筋層切除術(POEM)は食道アカラシアに対する新しい治療法として2008年に井上らによって世界で初めて行われた治療法である。しかし、これまでにおいてその合併症の報告は少ない。そこで、当院においてPOEM術後に気胸を発症しICU管理を要した一例を経験したので報告する。【症例・経過】29歳男性、2010年より食道アカラシアの診断で近医にて保存的加療を行っていたが症状が改善せず、POEM目的に当院紹介となった。 麻酔はプロポフォール、レミフェンタニル、ケタミン、ロクロニウムによる全静脈麻酔で行われた。手術開始後より気腹を認め次第に増強傾向を示した。その為手術開始約40分後に術者に依頼して腹腔穿刺を行い、脱気を施行した。その後もEtCO2は高値で経過したが酸素化には大きな問題は認めず、手術終了となった。手術時間は1時間54分で、術後はリカバリールームへ移動した。術直後より頸胸部にかけて皮下気腫を認め、自発呼吸出現するもシーソー呼吸様であり、EtCO2も70台と高値を示し、酸素化の低下も認めた。その為肺エコー施行した所、sandy patternの消失を認めたため、気胸疑いで胸部レントゲンを撮影したが明らかな気胸は認められなかった。呼吸不全の原因は不明であったが主治医と協議の上、CT撮影後に挿管のままICU入室の方針となった。CTでは左気胸を認めたものの、その後呼吸パターンは次第に正常化し、EtCO2も低下傾向を示したため同日抜管。その後も呼吸・循環は安定していたため翌日ICU退室となった。【考察・結語】 POEMでは二酸化炭素送気下に食道粘膜下トンネル作成や内輪筋切開を施行する。食道の最外層は漿膜ではなく、疎な結合組織で覆われている。そのため送気しながら粘膜下トンネルを作る際や筋層切開時に縦隔や腹腔内へair leakが発生すると考えられる。井上らの報告では気胸の発生は197例中1例のみであったということではあったが、二酸化炭素は非常に吸収性の高い気体であり、術直後にCTを撮れば気胸の発生率はもっと高いのではないかと考えられる。ただ本例においても次第に二酸化炭素が吸収されていくに従って呼吸状態も改善し、重篤な合併症とはならなかった。今後もPOEM術後は肺エコーやCTを施行して、抜管のタイミングは慎重に判断しなければならないと考えられた。